葛西紀明(土屋ホーム)が合計266・8点で2戦連続の3位に入り、自身のW杯最年長表彰台記録を43歳8カ月に更新した。個人の表彰台は今季3度目で通算59度目。1回目127メートルの10位から、2回目にW杯のジャンプ台記録に並ぶ最長不倒の143メートルで順位を上げた。

 ハイライトは2回目だった。夜空に力強く飛び出すと、葛西は向かい風をつかんだ。高い飛行曲線でW杯のジャンプ台記録に並ぶ143メートル。1回目から順位を7つ上げて「ごぼう抜きは最高の気分。しびれた」と満面に笑みを浮かべた。

 風の当たり外れが激しい展開で、1回目は不利な追い風に強く体を押されたが、粘ってK点を3メートル越えた。「よく10番に抑えた」と自賛する踏ん張りが大きかった。巻き返しを期した飛躍は条件にも恵まれて会心の出来となり、思わず妻と娘の名前を叫んだ。

 1月末に待望の第1子となる長女が誕生。団体戦を含めると3戦連続となった表彰式後、自身の愛称を逆にした「璃乃(りの)」と名付けたことを明かした。「ずっとノリノリノリノリと言ってたら、リノになっていいんじゃないって」。遠征中は妻から送られてくる写真や動画に頬を緩める日々だそうで「いいプレゼントになった」と喜んだ。

 技術的な裏付けもあった。5日の練習で、助走中に上半身の力を少し抜くと、感覚がよみがえった。12日からは得意のフライングヒルでW杯3連戦。「やっぱり優勝しないと。1シーズンに1回は勝ちたい」と意欲をみなぎらせた。