世界ランク10位の伊藤美誠(15=スターツ)が、準々決勝で昨年の世界選手権のシングルス女王、同2位の丁寧を4-2で破った。強豪中国の「ビッグ4」の一角を、自身初めて崩した。続く石川佳純との準決勝では右手親指付け根を痛め、第1ゲーム終了後に無念の途中棄権。決勝進出は逃したものの、団体戦の代表が内定しているリオデジャネイロ五輪に向け、大きな手応えを得た。

 伊藤が高校生最初の大会で結果を出した。サービスエースでマッチポイントを奪うと、最後もサーブで攻めた。10-9から、世界女王の丁寧のバックを攻めてからの3球目攻撃。最後は相手のレシーブがネットにかかってアウト。母美乃りさんら代表スタッフ、選手らが見守るスタンドにクルッと振り返り、両手でガッツポーズ。口を大きく丸く開け、目も丸くした驚きの表情。慌てて口を両手で覆った。

 過去4戦未勝利だった丁寧に初勝利。20センチ以上の身長差をものともせず、パワフルな強打には、得意の前陣で対応した。手足の長い相手が苦手とする胸元を巧みに突いて攻めきった。「ヒャヒャヒャヒャヒャ。ビックリ。戦術とかは特になかったけど、自分のプレーを出せれば、思い切ってやれればと思っていた。5度目の正直かな」と明るさ全開で喜びを表現した。丁寧に加え、世界ランク1位の劉詩■、朱雨玲、李暁霞を含む「ビッグ4」相手に9戦目でようやくつかんだ初白星。「このまま、もう試合をしたくないくらいうれしい」と本音も漏らした。

 先月に大阪・昇陽中を卒業したばかりの15歳。昨年はワールドツアー・ドイツオープンで14歳152日の史上最年少優勝を果たすなど、もっとも躍進した選手に贈られる「ブレークスルー・スター」も受賞した。昨年5月の世界選手権以降、肩までだった髪を伸ばし続けている。「高校生になったら、もう子ども扱いはしてほしくないんです。大人に見られたい。普段の行動からしっかりしなくちゃと思います。それに髪の毛をおしゃれにしたり、女性らしくも目標です。へへへ」。愛らしいおでこに、お団子ヘア。プレーも精神面も女子力も伸び盛りだ。

 準決勝でも同4位の石川からも初勝利を狙った。第1ゲームを12-10で奪ったが、丁寧戦で台にぶつけたという右手親指の痛みが悪化し、途中棄権。「(今後の)試合もあるし、無理をしないようにした」と目を赤くした。歓喜も悔し涙も、リオへの大きな収穫には違いない。

※■は雨カンムリに文の旧字体

 ◆卓球の五輪アジア予選 今大会は五輪シングルスのアジア代表枠男女各11を争う。第1ステージは5地区に分かれ、日本勢は東アジア地区のトーナメントを戦う。各地区の1位がまず出場権を獲得。第2ステージは地区に関係なく、A~D組の各組1位が代表切符を得る。さらに各組2位同士が対戦し、最後の2枠を争う。今大会で出場権を逃しても、5月に発表される世界ランク上位22人は五輪に出場できる。男子7位水谷、同15位丹羽、女子4位石川、同6位福原の出場は事実上確定している。