全日本柔道連盟は17日、全日本女子選手権後に開かれたリオデジャネイロ五輪女子78キロ超級代表を決める強化委員会を報道陣に公開した。

 試合会場と同じ横浜文化体育館で行われた会では、さまざまな意見が飛んだ。

 代表争いの俎上(そじょう)に登ったのは、優勝した山部佳苗(25=ミキハウス)と準優勝だった田知本遥(27=ALSOK)。決勝は互いに技のポイントがないまま進んだ残り1分を切ってから、田知本が左膝を負傷。何とか立ったが、山部が攻勢を強めて隅落としから横四方固めで一本勝ちしていた。

 その後の直前のコーチ会議で作成された代表候補選手の原案で選ばれたのは山部だった。監督、コーチは満場一致だったが、強化委員会の場では異論も出た。

 ある委員がいの一番に追及したのは、選考基準のブレについて。超級をのぞく男女各6階級12人が決まった今月上旬の全日本選抜体重別選手権後の強化委員会で最重視されたのは、国際大会の成績、外国勢との勝敗だったが、この日の78キロ超級に関しては、「ここだけ別。2週間前とスタンダード(基準)が変わっているんじゃないか」という声が出た。

 2人の国際大会の成績を比較すれば、田知本愛に軍配が上がるのは明らか。一昨年の世界選手権は銅メダル、昨年は準決勝でロンドン五輪覇者のオルティス(キューバ)を破っての銀メダル、さらに2月のグランドスラムパリ大会では世界ランク1、2位の中国選手を下して優勝も飾った。一方の山部は世界選手権は14年が7位、15年は銅メダル、グランドスラムパリ大会では初戦敗退に終わっている。

 これに対し、強化委員会後の記者会見では、山下泰裕強化委員長はこう説明した。

 「対外人、2年間の海外での実績、世界ランクでは田知本の方が若干良いじゃないかという声もあった。福岡の時(選抜体重別)には海外成績を優先すると言いながら、国内で2回勝った(選抜体重別と全日本女子選手権)山部を選ぶのはいかがなものかと言う声もありました。しかし、強化委員の方々のなかにやはり、海外の大会をよく見ているわけではない、しかも監督、コーチは全員一致で山部を選んでいる、その監督、コーチが常に試合を見ている。2年間をみると同じように勝っている、体重別、全日本の優勝、内容も山部のほうが良かったし、一本で勝ったことを評価することが多かった。挙手に至らずに山部に決まった」。

 他にも田知本のケガの状況を考慮すべきという声や、山部の精神面での成長を期待する声もあった。最終的には多数決をとるための挙手は行わなかったが、すんなりとはいかない選考となった。