王子谷剛志(23=旭化成)が、2年ぶりの王座に返り咲いた。原沢久喜(23)がリードし、七戸龍(27)が追いかけるリオデジャネイロ五輪代表争い。2人の決勝対決が予想される中、王子谷が見せた。準決勝で七戸に一本勝ちすると、決勝でもロンドン五輪代表の上川大樹(26)に一本勝ち。5試合中4試合一本勝ちの圧勝で2度目の頂点に立った。

 父の声が背中を押してくれた。「たまに来ると勝つんです。2年前もそうだった」。大阪府警に勤務する父高次さん(55)は柔道五段。「子どものころ、シドニー五輪のビデオを何度も見せられた。自然と柔道が好きになって、自分でやりたいと言った」と振り返った。家で父に手ほどきを受け、柔道人生が始まった。だから今でも「(スタンドから)声が聞こえると、頑張るのかも」と笑った。

 リオデジャネイロ五輪の可能性はなかった。それでも「五輪は特別。小さいころから憧れの大会だった」という。憧れは、シドニー五輪優勝のビデオを何度も見た日本男子の井上康生監督だ。もともと目標としていた東京五輪に向けて「勝たないと20年はないと思った。自分にとっては、東京五輪の選考はもう始まっている」と話した。

 同じ東海大の高藤、ベイカー、羽賀がリオ五輪代表になった。旭化成の大野、永瀬、羽賀も代表だ。周囲はリオ代表ばかり。「めちゃめちゃ刺激になります。自分も、と思いますよ」と言った。柔道が五輪競技になった64年以降、2回以上優勝したのは11人。うち9人は五輪に出場し、6人は金メダルを獲得している。3回優勝だと五輪は100%出場になる。「東京五輪に向けて、(全日本を)連覇していきたい」。その先には、父のビデオで憧れた五輪がある。20年、その舞台は2度日本一に輝いた日本武道館だ。