日本代表(乾、三井、吉田、箱山、中村、丸茂、中牧、小俣)が3大会ぶりの五輪メダルへ試練を味わった。メダル争いのライバルのウクライナに敗れた3月の五輪最終予選からプログラムを大幅に変更。優勝こそしたものの、短期間の練習では追いつかず、終盤は疲労から同調性に欠ける場面もあった。井村雅代ヘッドコーチ(HC、65)は危機感を漂わせながら、残り3カ月で万全に仕上げる決意をみせた。

 シンクロせず、バラバラだった。チームFR決勝。日本代表は終盤の約22秒の長い足技が乱れる。メダル争いのライバルは不在。優勝こそしたが、井村HCは「選手は全く泳ぎ切れていないし、コーチも教え切れていない。メダルまでは山あり谷あり」と危機感をあらわにした。

 無理もない。3月の五輪最終予選。チームの出場権は得たものの、ウクライナに0・0525差の僅差で敗れ2位。井村HCは昨夏世界選手権後から取り組んだFRのプログラムの変更を決断した。五輪メダル奪還を見据え、リフトを含め、1つ1つの動きの難度は上げた。井村HCが「練習から完璧なものができていない。仕上げていない」と話すように、未完成の状態で大会を迎えていた。

 曲こそ変えていないものの、振り付け、動き方などを一から作り直した。選手たちは戸惑いを隠せなかったが、レベルアップなくしてメダルはない。プールサイドのボードには、五輪最終予選でのウクライナとの差「0・053点差」の文字。悔しさが厳しい練習での底力になる。「負けたことは神様からのプレゼント。勝っていたら危機感が違う」と三井。残り3カ月で試練を乗り切る決意は強い。

 突貫工事の状況で収穫もあった。日本独自の逆立ちから飛び上がるリフト。回転数は足りなかったが、高さを出し、見せ場をつくった。日本と中国で計14個の五輪メダルをもたらした井村HCは「完成形は見えている。はまったときは戦える」と自信をみせる。続けて「日々の練習で、私の要求をすぐ克服しなさい。時間がないので何日も待てません」と選手に厳しいノルマを設定。チームでは04年アテネ以来、3大会ぶりとなるメダルへの道のりは簡単ではない。【田口潤】