競泳男子背泳ぎの入江陵介(26=イトマン東進)が25日、東京・多摩市に完成したばかりの「AQIT(アキット)」で練習を公開した。ここはイトマンスイミングスクールがおよそ40億円を投じ、リオデジャネイロ五輪に間に合わせた日本初のオリンピック仕様公認プール。泳法解析システムを完備し、リオ五輪を2カ月後に控えた入江らトップスイマーにとって、非常に頼もしい拠点になる。

 入江と男子400メートルリレー代表の塩浦、女子400メートルリレー代表の山口の3人が、大画面を指さしながら意見を交換した。入江と山口はプールの中。すぐにフォームが確認できる。入江は「JISS(国立スポーツ科学センター)でもやっていましたが、プールから上がって画面を見に行って、そこからまたプールに戻る感じでした」と言った。

 約2億円をかけた泳法解析システムは、世界最先端の技術。水中に21台、天井5台、プールサイドに11台、計37台のカメラであらゆる角度からの撮影が可能だ。画面は縦1・16メートル、横6・27メートル。モニター映像を切り替えれば他の選手と比較することもできる、スロー再生もこなす。

 イトマンの強化本部本部長の星野納氏(52)は「工期スタートは昨年の今ごろです。リオ五輪前に使えるようにと、100人の職人さんに毎日夜遅くまで作業していただきました」と、技術の粋を集めた施設に自信を見せる。

 JISSからもデータを提供してもらい、カメラの配置や台数を精査。選手の技術、分析能力の向上に主眼を置いた。星野氏には「AQIT」から、さらに進んだ設備へ、との思いがある。「これを皆さんで使っていただき、さらに技術を高めていきたい」。

 水深3メートルの長水路とスタート台はオリンピック仕様。選手寮も併設した。今後はイトマン所属選手だけでなく、広くトップスイマーが利用できる運営を目指す。入江ら日本代表チームは海外遠征や国内試合もあり、五輪までの「AQIT」活用には限りはある。それでも、リオ五輪前に選手が使えるメリットは、計り知れないものがある。【井上真】