柔道の世界ランキング上位で争うマスターズ大会最終日は29日、メキシコのグアダラハラで行われ、男子90キロ級で21歳のベイカー茉秋(東海大)が初優勝した。初の世界ランク1位も奪取し、初出場となるリオデジャネイロ五輪へ勢いをつけた。同代表で同100キロ超級の原沢久喜(23)は3位で、14年11月からの国際大会連続制覇が7でストップ。女子78キロ超級の山部佳苗(25)も3位だった。

 メキシコへ向かう23日の成田空港から、1人だけモチベーションが違った。「勝てば1位なんですよ」と血気盛ん。ベイカーには、世界一の男への挑戦をかけた大事な大会だった。

 ロシアのカルモルゼフとの決勝で、その気持ちが前面に出た。間合いを詰めて、持ち味の接近戦へ前に出続けた。相手に残り10秒で指導がきてポイントで並ぶと、「絶対に勝たないといけない」と延長戦へ。1分20秒過ぎに腰に乗せて投げ、有効で勝負を決めた。胸の日の丸を誇らしげにたたき、「疲れたが、気持ちで勝った。優勝と2位では天と地の差」と誇った。

 日本選手があまり気にしない世界ランクへのこだわり、外国人が得意とする接近戦が持ち味のスタイルも、他選手とは一線を画す。旧86キロ級を含め、日本人の五輪王者が過去1人もいない階級を制する可能性は十分。準決勝では、世界選手権を3回制したあこがれのイリアディス(ギリシャ)にも勝ち、「すごく強かった。本当に自信になる」。

 出発の成田空港ではもう1つ訴えていたことがあった。「長袖しかなかったんです。暑い!」。半袖を家で発見できずに1人だけ長袖姿…。その独特の自然体も、なんだか頼もしい。