日本代表(世界ランク10位)がW杯イングランド大会後、主力選手で編成した初の試合で、苦しみながらも難敵を撃破した。世界ランク18位のカナダに26-22で逆転勝ち。後半29分にFB松島幸太朗(23=サントリー)が逆転トライを奪ってから猛攻を受け、最後は「サヨナラ負け」の危機を迎えたが、逃げ切った。チームは13日に帰国し、18日のスコットランド戦(豊田ス)に向けて愛知に移動する。

 ボールはインゴール内、芝生から約30センチ。やっと止まった。後半ロスタイム、26-22でのラストプレー。しゃにむに押してくるカナダに、反則をはさんで25回の連続攻撃、実に約80メートルの前進を許す。ゴールまで詰め寄られ、味方も巻き込んでなだれこまれた。ボールが地面についていれば負け。だがWTBミフィポセチが間に体を投げ出して阻止した。試合終了。選手たちは笑顔なく立ち上がった。

 フッカー堀江主将が不在でフル出場した木津は、最後の怒とうの攻撃に「うそだろ、と思いながら走っていた」と振り返った。連続攻撃の中で、カナダは何度も落球していた。本来は反則だ。「審判は見えなかったのでしょうが…」。アウェーの笛ともとれる判定に苦しみ、しかも後半13分には退場者を出し14人になった。「もっていかれると思いましたね。今までだったらあれで取られてたので」と胸中を明かした。

 それでもカナダを体1つ分で振り切った粘りは、スーパーラグビー(SR)でもまれた成果だった。大きな相手との毎週の試合で、体が覚えた感覚がある。鋭い突破を繰り返したCTB立川主将は「真正面から当たるのではなく、体半分ずらしたり(走り込む)角度を変えたり。そこはSRを経験してよかった」と成長を実感。南アフリカの猛者とのぶつかり合いではじめは体中にできたアザは、少しずつ減った。悔しい思いも重ねる中で、日本の強みはまた磨かれた。

 今回のメンバーで最多73キャップのプロップ畠山は「やることは山積み」と話す。歴史的勝利を挙げたエディー・ジャパンの一員は「素晴らしかったのは本番の一瞬だけで、あとの4年間はくそみたいに苦しい思いしかなかった」。毎朝5時起きでのウエートトレーニング、雨の中で約20分で30本近いスクラムを組み、なおW杯の8強は届かなかった。「そういうものだと思うんです。どれだけ苦しいことを積み重ねたか。それが出るのがW杯」。世界一の練習量と自負しても足りなかった。W杯日本大会まで残りは約3年。格下との接戦で得た白星での船出に、満足はない。【岡崎悠利】