謙さんが全米テニス、錦織圭を語った! 米国を舞台に国際派俳優として活躍する渡辺謙(56)が、29日開幕のテニス4大大会、全米オープンに出場する世界7位の錦織圭(26=日清食品)を現地で取材している。年末に放送予定のテレビ特番企画でゴルフの松山英樹(24)とともに対談を予定しており、そのための密着取材だという。1日に2度行っている錦織の練習を追いかけ、周辺スタッフにも話を聞く徹底ぶり。渡辺が、日刊スポーツの取材に応えた。

 -きっかけは

 渡辺 最初は対談という話だったけど、いろいろ立ち入った話も聞きたい。それには彼らの主戦場を見ておかないと語れないから。世界の環境の中、トッププレーヤーとして、何を考えて、どういう風に環境、文化の違いを跳ね返すのか、飲み込むのか。

 -世界で戦う共通点は

 渡辺 僕はとうが立ってからだから(笑い)。プレーヤーとしてのピークは職種によって違う。去年、ブロードウェーに立たしていただいて、自分はまだこんなに伸びしろがあるんだと気づかされた。同じ土俵では語れないと思うけど、(錦織に)自分に何を科していくかは、伝えられることがあるんじゃないかと。

 -錦織の印象は

 渡辺 錦織君の本を読んだときに、目標ってなんですかと聞かれて、目標はない、目の前のことを集中してやっている、と言っていた。僕も本当にそう。自分のビジョンとか、あるべき姿とか、全然思い浮かばない。目標を立てると、そこまでしか到達しない。イマジネーションをはるかに超えるオファーが来たりもする。だから、そう言う意味では彼らも、何年後にメジャーを取るとか、そういう逆算をする必要がないんだと思う。

 -コート上の真剣さと普段の天然系のギャップがいいと言われている

 渡辺 何か違うスイッチがあるんでしょう。僕もかっこつける訳じゃなくて、根暗なんです。嫁さんにいわせるとホント暗いよね、といわれる。ただ、役をやる中で磨かれる部分がある。性根は変わらないけど、キャラクターは変えられる。そんな発想をすると、こんな楽なんだ、と役をやりながら発見した。それを私生活の中でも、これはこっちのほうのキャラでやればいいんだ、乗り切ればいいんだと、まあちょっとキャラクターの窓が増えたと思う。(テニスやゴルフは)孤独なスポーツじゃないですか。だから、どうやって乗り切るか何だと思う。

 -錦織は2年前にこの全米で準優勝した

 渡辺 2年前は、彼の中でも戸惑いとともに、メジャーというものが見えていたんだと思う。それが今は完全に射程にとらえている。トーナメントでの対戦や、いろんな兼ね合いもある。でも、それを重ねていったら、いつか届くんだという、2年前にはなかった確かな実感があるんだと思う。勝手な臆測ですけど。

 -世界で戦える秘訣(ひけつ)みたいなのは

 渡辺 言わなくても、出て来るヤツは出てくる。環境は、運としてあると思う。でも、出てくるやつは出てくる。ぼくが四の五の言うことじゃない。ただ、日本は豊かなんだと思う。充足感が得られちゃう。でも、世界に出てみれば、こんなすごいのがあったんだというのが見えてくる。出ないと分からない。

 -全米テニスで感じられたことは

 渡辺 大会の環境やシステムが想像を絶する大きなイベント。米国がすごいのは、スポーツにしても、音楽、舞台にしても、エンターテインメントに対するリスペクトが明らかに違う。大切にして、いいものを供給しようという努力が常にある。今回、五輪も(日本国内で)盛り上がったけど、これが本当に今後続くのか、という。東京五輪が終わったら、終わりなのかな、というのがどうしてもあるんで。それは僕らの仕事にしても、あの、無理やり尊敬してくれよ、というのではなくて、僕らも大切にするから、大切にして欲しいと。世界に誇れるものをつくっていきたい。