リオデジャネイロ五輪柔道金メダリスト3人が30日、都内の外国特派員協会での会見に出席した。

 男子90キロ級のベイカー茉秋(21=東海大)は「回数を重ねるごとに慣れてきて、あまり緊張も感じなくなってきました」という会見で、堂々と発言する姿があった。出色だったのは、国際化が進んだことで、レスリングかと思われるような攻防が増え、「柔道の試合自体のおもしろさが失われているのでは?」という指摘を受けた場面。その見解は日本柔道界の「新種」と言われるだけの証左を含んでいた。

 「僕もちょっと前はそういうイメージはありましたが、でも最近は脚も持てなくなりましたし、日本人より技術が優れた外国人もいます。僕よりもきれいな技を持っている外国人選手はたくさんいるし、僕はそんな(おもしろくなくなった)ことはないと思う。僕も五輪までの4年間で外国人から技を盗むこともあったので」。

 発祥国の伝統も踏まえて武道の流れを組んだ「柔道」と、柔術やサンボなどの他格闘技の技術も取り入れた「JUDO」は比較されがちで、どちらを目指すべきかという議論は散見される。正しく両手で相手の道着を持って投げる「柔道」スタイルを信奉する日本にあっては、持たなくても投げる技術にも優れる「JUDO」は敬遠をされる傾向にあることも事実だろう。しかし、ベイカー自身がリオ五輪で見せたのは、むしろ後者の技術。しっかり左の引き手をしぼって腰を引き、相手との間合いを取ったところから攻略の糸口を探るのが主戦法。この日の質問にはそのスタイルをやゆする意図はなかったが、ベイカーがしっかりとした答えを返したことで、もはや柔道対JUDOという対立構造を組み立てる必要がないことも、浮き上がらせていた。

 ロンドン五輪で男子金メダルなしに終わった後に就任した井上康生監督は、積極的に他競技から学ぼうとした。サンボや沖縄相撲などにも代表合宿期間中に取り入れた。ベイカーは「新しいことを取り入れたからこそ結果も出た。そういう面は柔軟に対応できて良かった」と振り返る。リオ五輪では26カ国のメダリストが出るなど、世界的に広がる柔道。20年東京五輪に向けても新たな技術が注入されていくだろう。「東京に出るからには連覇目指したい。柔道へのイメージももっと良くして、柔道人口が増えるように貢献したい」と話すベイカー。「新種」だからこそ、そのスタイルがまたどう変化していくのかにも興味は尽きない。【阿部健吾】