リオデジャネイロ五輪レスリング女子53キロ級で4連覇を逃し、銀メダルに終わった吉田沙保里(33)が1日、現役続行の意思を表明した。大阪・箕面市内でのテレビ番組収録後に「こんな機会、絶対にないので」と、37歳で迎える20年東京五輪を目指すことを明言した。リオ五輪のチームリーダーである栄和人至学館大監督(56=日本協会強化本部長)から打診された「コーチ兼選手」にも前向きな姿勢を見せた。

 引退か、現役続行か。吉田の気持ちがついに固まった。決め手は一選手として抱く、純粋な思いだった。

 「もちろん出られれば。(次回五輪は)東京ですからね。これが違う国とかだと『やめます』って言っていました。こんな機会は絶対にないので」

 4連覇を目指した今夏の五輪は、決勝でまさかの黒星。号泣した。リオを離れる際には「引退も頭の中に出てきた」とも言った。だが、帰国後に待っていたのは「笑顔で終わってほしい」といった声援。心は動いた。この日、引退表明についても「ないです、ないです」と完全否定した。自身が招致に関わった20年東京五輪へ、37歳で挑戦する活力が生まれてきた。

 練習拠点を置く愛知・至学館大の栄監督からは、大学や代表での「コーチ兼選手」打診も既に受けた。心遣いに感謝し「それもありだなと思います」と前向きな姿勢を示す。

 「今までは2位、3位だったり、1回戦負けの人の気持ちを考えたことがなかった」。カンテレのテレビ収録で対談したお笑いタレント小籔千豊からも「これからはいろいろな道が広がった」と背中を押された。

 現時点で休養の意向はないが、1~2年は試合に出ない可能性が高い。まずは競技と指導を両立し、東京を目指す準備を進めていく構えだ。近く自らの口で説明を行う予定。その上で吉田は言った。「やっぱり格闘家なので『次は負けないぞ』というのはありますよね」。闘争本能が再び、呼び起こされた。【松本航】

 ◆リオ五輪の吉田 伊調馨に続く五輪4連覇を目指し、53キロ級に登場。決勝で過去2戦2勝だった24歳のヘレン・マルーリス(米国)に1-4で敗れた。連勝は206試合でストップ。「応援してくれた人に申し訳ない」と泣きながら銀メダルを受け取った。