金メダルの厚い壁をぶち破った! リオ五輪銅メダルで、世界7位の錦織圭(26=日清食品)が、同五輪金メダルで同2位のアンディ・マリー(英国)を1-6、6-4、4-6、6-1、7-5で撃破。3時間58分の死闘を制し、4強入りした。4大大会でのベスト4は、準優勝した14年全米以来2度目。この勝利で、最新世界ランクでの5位以上復帰が確定した。9日(日本時間10日)の準決勝は、同3位のスタン・バブリンカ(スイス)と対戦する。

 決して心は折れなかった。めまぐるしく入れ替わる攻防戦。縮こまりそうな腕を必死で振った。チャンスを何度も逃した。そのたびにはい上がった。「第4、5セットはベストなプレーができた。最高の試合だった」。合計272ポイント目。最後、両手を突き上げたのは錦織だった。

 リードしては、サービスゲームを落とし、追い抜かれては追い越す。両者合わせて17度のブレーク合戦。最終セット、錦織の4-3からのサーブで40-0の時、勝利がちらついた。サーブを落として追いつかれ「一番こたえた。メンタル的に落ち込んだ」。それでも「冷静に努めた」。くじけそうな心を奮い立たせた。

 5オール。錦織に、このセット3度目のブレークポイントがきた。フォアのドロップショットを放つ。マリーが追いつき放ったバックのパスに、飛びついてボレー。放物線を描いた返球は、相手のコートにふわりと弾んだ。マリーは思わずラケットをネットにたたきつけた。相手の心が折れた。錦織が五輪準決勝のリベンジを果たした。

 14年全米準優勝とは違う価値がある。当時は世界11位。右足の腫れ物を手術したばかりで、失うものはなかった。今回は世界7位。「向かっていけた。思い切りプレーできた」。勝ちにいって勝利をつかんだ。

 マリーは今年4大大会で全て決勝に進み、ウィンブルドンで優勝。リオ五輪も制した。錦織が「今、一番強いかもしれない」という相手の鉄壁の守備を、マリーを19本上回る48本の決定打で打ち破った。

 以前、ジョコビッチ、フェデラー、ナダルを含めたビッグ4の中で、マリーが「最も勝ちにくい」と話していた。「プレースタイルが似ている」ため、相手にパワーとリーチがある分、より手強い。ビッグ4の中で1勝しかできていなかったのはマリーだけ。その相手を、大舞台で破った。

 準決勝の相手は「何となくやりたくない」と話していたデルポトロではなく、バブリンカとなった。14年全米準々決勝では、フルセットで下した。勝てば決勝進出だけでなく、最新世界ランクでも自己最高の3位が確定する。「疲れているので体を回復させるのが最優先」。再び、錦織が歴史を動かす時が来る。【吉松忠弘】

 ◆WOWOW放送予定 9日午前7時55分~、10日午前0時55分~、WOWOWライブ。女子シングルス準決勝ほか。生中継。放送時間変更の場合あり。