アズワンがQB矢部椋太(23)の45ヤードTDパスなどで開幕2連勝を飾り、次節の王者パナソニック戦(18日、神戸市王子スタジアム)に弾みを付けた。

 もどかしい戦いにけりをつけたのは「水野イズム」を持つ矢部だった。7-0の第2Q11分31秒。矢部が投じた45ヤードのパスを、相手と競り合ったWR川畑がガッチリとつかんだ。主導権を握るタッチダウンに、黒の戦士が喜びの声を上げる。追手門学院大出身の矢部は「気持ちよかったけれど、いろいろな選手の個人技での得点が多い。まだあまりかみあっていない」。笑顔は見せながらも、言葉は謙虚だった。

 14-0の第4Q4分2秒でも、矢部が29ヤードTDパスを成功。パスにおいて1人で計237ヤードを稼ぐ、大活躍だ。矢部が追手門学院大4年だった14年、京大を日本一に導いた経験を持つ水野弥一氏が総監督に就任。関西学生2部の追手門学院大にとっては、大きな転機だった。「すごくいい経験になりました。一番つらいことをしたので、どんなことも乗り越えられる自信がつきました」。午後3時からの2時間、水野氏が持ち込んだ器具に体をぶつける練習を実施。その後に通常練習を行う毎日だった。「僕らは2部だったので、1部がどれぐらいのものか分からなかった。社会人1部でやっている今にも、あの経験はつながっています」。大学では同年に入れ替え戦へ進出する思い出もできた。

 矢部がずっと心がけているのは「やるか、やらないか。2つに1つ」という水野氏が何度も唱えてきた言葉。次節パナソニック戦に向けて、2度の練習で最高の準備をするためにも「覚悟」は必要になる。「日本一のチームとやれるのは光栄。全員が100%の力を出せば、勝てると思っています」。チームとしての連動に課題はあるが、裏を返せば伸びしろになる。確かな自信を糧に、ジャイアントキリングを狙う。