2020年東京五輪・パラリンピックの開催費用などを検証する東京都の調査チームは29日の「都政改革本部」第2回会議で、大会経費が推計で3兆円を超える可能性を指摘し、コスト削減のため三つの競技会場について建設中止を含め抜本的に見直す案を小池百合子知事に報告した。小池知事は代替地での開催が可能か本格的な検討に入り、1カ月をめどに見直しの方向性を示す。

 大会経費は招致段階で7340億円としていたが、物価高騰などで大幅に膨らむ見通し。大会組織委員会は年内に予算計画を国際オリンピック委員会(IOC)に提出する予定だが、会場見直しとなればスケジュールにも影響しそうだ。小池知事は記者団に「負の遺産を都民に押しつけるわけにはいかない。早急に答えを出したい」と述べた。

 上山信一慶応大教授らの調査チームが見直し対象としたのは、ボートとカヌー・スプリント会場の「海の森水上競技場」、バレーボール会場の「有明アリーナ」と、水泳会場の「五輪水泳センター」。代替地の候補として、ボートとカヌー・スプリントは宮城県登米市の「長沼ボート場」、水泳は江東区の「東京辰巳国際水泳場」、バレーボールは横浜市の「パシフィコ横浜」などの展示場・アリーナを挙げた。

 これら既存施設の改修や仮設施設の建設で対応できないか検討した上で、仮に現在の予定地で建設する場合は過剰な座席数の削減など規模縮小を提案した。

 調査チームは国や都、組織委の役割分担が不明確で司令塔を欠いているとし「社長と財務部長のいない会社と同じ」と批判。各組織のトップが重要事項を協議する「調整会議」が機能不全だと指摘した。コスト抑制のために大会予算は国か都が一元的に管理すべきだと提言し、大会準備態勢の見直しにも踏み込んだ。

 仮設施設は都内会場を都負担とし、都外は地元自治体と国が分担するルール作りなども求めた。都が拠出した資金の割合が97・5%に上り、赤字が出た際に補てんすることになっている組織委を監督、指導できるよう協定を結ぶ必要性にも言及した。組織委の森喜朗会長は29日の調整会議後、記者団に「都の下部組織ではない」と反発した。

 組織委は安定した収入を確保できるようになったとし、都から拠出を受けている58億5千万円のうち57億円の返還手続きに入ることを同日の理事会で決めた。