国際ボート連盟のロラン会長は3日、都庁に小池百合子都知事を表敬訪問した。

 東京五輪・パラリンピックのボート、カヌー・スプリントの会場となる「海の森水上競技場」について、開催費用などを検証する東京都の調査チームが建設中止を含めた見直しを同知事に提言しており、この経緯に驚きながらもロラン会長は言葉を選びながら、同施設での競技開催を強く望んだ。

 建設予定地の視察を済ませ、夕方に都庁で小池都知事と面会。同知事から調査チームが動きだした背景の説明を受けた。ロラン会長は「知事との会談はずっと前から日程を組んでいたが、それは別のテーマについて話し合うためだった」とし、同連盟が東京都と良好な関係を築いてきたことを感じさせた。

 その上で、調査チームが見直しを含めた提言をしていること、宮城県登米市の長沼ボート場が代替会場の候補に挙がっていることを念頭に「まずは驚いた、そして多少の失望を感じた」とし、東京都が建設費用の高騰などを理由に調査をしていることに不快感を漂わせた。ただ、小池知事が、建設見直しはまだ結論には至っていない、という説明には鋭く反応した。「まだ決まっていない、いまは第1段階ということが、私には非常に重要。このことが最初のグッドニュースだ」とコメントし、これから国際ボート連盟、国際オリンピック委員会(IOC)の協力いかんによっては、同施設での競技開催の可能性が十分に残されていると強調した。

 両者の会談は友好的で、小池知事が事情を説明し、ロラン会長が同連盟の立場と、同施設に決めた背景を力説した。ロラン会長は「都内に限らず、国内のあらゆる競技場を調査し、私たちは9カ所を訪問している。その調査の結果として2014年に、海の森水上競技場という結論に至っている」と説明。その後、小池知事が退室した後の囲み取材では、ロラン会長が長沼ボート場について「レガシーという面で低い。東京から遠く、アスリートにとってベストと言えるかどうか」と、疑問を投げかけた。

 ボート会場の専門知識と、国内の競技場を調べてきた経験をフルに活用し、今後はロラン会長の巻き返しが予想される。小池都知事は「選挙で五輪の経費、環境整備を訴えてきた」とし、今回の調査が都民の理解を得ていることを強く印象づけた。ボート競技のアスリートから直接話を聞く考えも示しており、建設見直しか、建設続行かの決断には、まだ時間がかかりる見通しだ。