内村と白井をサッカー選手並みの人気に-。国際体操連盟(FIG)の新会長に選出された日本協会の渡辺守成専務理事(57)が、ド派手な公約を掲げた。19日、東京都内でのFIG総会の会長選で圧勝。五輪実施競技で日本人の国際連盟(IF)会長は、94年の死去まで国際卓球連盟(ITTF)会長を務めた荻村伊智朗氏以来。任期は17年から4年間。20年東京五輪を控える日本スポーツ界に追い風が吹いた。

 欧州以外で初めて、第9代FIG会長に決まった渡辺氏は「体操競技のプレゼンス(存在感)が上がるようにしたい」と言った。体操は「水泳、陸上と並ぶスポーツの御三家」というが、その実情は「トップ選手でも環境は良くない」。だからこそ、体操界の変革を公約。「人気が高まれば資金も豊富になり、いいサイクルができる」と訴えた。

 目標は大きく「内村と白井をサッカー選手並みに」とぶちあげた。「内村や白井の活躍、リオ五輪団体金メダル獲得が選挙戦の後押しになった」が、その2人も世界的な知名度は高くない。内村、白井をサッカーのメッシやC・ロナルドのようにすることが、新会長の思いだった。

 選挙は圧勝。5期20年務めた欧州体操連合のジョルジュ・グルゼク会長(68=イタリア)を100票対19票で破った。立候補を決めた2年前から、FIG加盟142カ国中、102カ国を回った。アフリカや中南米など普及が遅れる地域の声に耳を傾け、中古の器具を寄贈、コーチ派遣の要望に応じた。強化体制が整わないベトナムやチュニジアなどの日本での合宿を受け入れた。各大陸連盟の現状に合わせて支援しながら「体操界を変えたい」と訴え、多くの支持を集めた。

 体操の存在感を上げるためには「もっと分かりやすくすること」。3Dレーザーセンターを使用する新採点システムを来年の国内大会から試験導入、20年東京五輪での実用化を目指している。「美しい体操に日本のIT技術を加え、公平で分かりやすい競技に変えたい」と説明した。

 日本協会では強化体制を刷新し、体操ニッポン復活に貢献した。今度は世界のトップとして発言力を強め、競技、内村、白井の人気を高める。「縁の下から世界の体操を支えていきたい」。謙虚な言い回しながら、その野望は大きかった。

 ◆渡辺守成(わたなべ・もりなり)1959年(昭34)2月21日、北九州市生まれ。戸畑高-東海大。同大体操部時代には、ブルガリア国立体育大研究生として留学し同国の代表チームコーチも経験。84年にジャスコ(現イオン)入社。イオン新体操スクールを立ち上げ、イオン新体操クラブの代表就任。現在はイオンリテール・スポーツ&レジャー事業本部長。日本体操協会では理事、常務理事を経て、09年に専務理事就任。13年から国際体操連盟理事。