神戸製鋼が、20日に53歳の若さで亡くなった平尾誠二ゼネラルマネジャー(GM)にささげる白星を挙げた。死去から2日で迎えたホンダ戦を37-24で制し6連勝。天国に勝利を報告し、フランカー橋本大輝主将(29)は試合後の会見で号泣した。喪章を着けた特別な戦いで3トライ差をつけてボーナス点も獲得し、首位ヤマハ発動機を勝ち点5差の3位で追走。13季ぶり優勝で恩返しするつもりだ。

 試合後の会見場で、橋本大主将が号泣した。天国の平尾氏にささげた勝利から約20分。「今日はなんとしても勝たないといけなかった。この勝利を平尾さんに見てほしかった」。張り詰めた糸が切れると、元選手で37歳の井上聖人通訳も一緒に涙を流した。

 バックスタンド中央に半旗が掲げられた。神戸製鋼の選手はジャージーの左袖に喪章を縫いつけて入場した。黙とうをささげる間、CTB山中は「平尾さんのことをすごくいろいろ考えた」。悲しみに暮れた20日の緊急ミーティング以降、選手間で「平尾さん」の名前はあえて口にしなかった。誰ひとり公の場で涙を見せることはなかったが「非常にタフな1週間を乗り越えた安心感と、平尾さんが亡くなられた寂しさ」に主将が感極まった。

 試合開始のキックオフはお見合いのような形でボールがワンバウンドした。重たい空気を一瞬引きずったが、すかさずボールを持った橋本大がタックルを受けながら10メートル、20メートルと前進。背中でチームを引っ張る主将に仲間が続く。前半5分にはロック張が先制トライ。同14分にはBKとFWが融合したライン攻撃で、橋本大がインゴールに飛び込んだ。平尾氏が今夏、病床でつぶやいた「昔の神戸製鋼みたいになった」という言葉通り、日本選手権7連覇時代を思い起こさせる攻撃で6トライを奪った。

 「平尾さんが遠征先のホテルにいると、ファンが群がってきて…」と思い返す同大の後輩のWTB大橋は途中出場した。日本代表フッカー木津は「いいラグビーをすれば喜んでくれる。神戸らしいラグビーを貫き通す」。それぞれが、80分間のプレーに感謝を込めた。橋本大も涙を拭い「目標はあくまでも優勝です」と言い切った。目標の日本一へ、平尾氏の思いも背負って歩み続ける。【松本航】