東京五輪の期待のホープがやってのけた。男子66キロ級の阿部一二三(19=日体大)が、先月の講道館杯全日本体重別選手権の準々決勝で敗れた橋口祐葵(22)に一本勝ちし、2年ぶり2度目の優勝を果たした。女子52キロ級では妹の詩(うた、16)が準優勝。リオデジャネイロ五輪男子60キロ級銅メダルの高藤直寿(23)は準優勝、同女子48キロ級銅メダルの近藤亜美(21)は3位に終わった。

 甘いマスクの阿部が決勝では鬼の形相になった。相手は約3週間前に敗れた橋口。開始1分2秒に、袖釣り込み腰で有効を奪い、その43秒後に得意の背負い落としで完璧な一本を奪った。勝利を確信した瞬間、笑みを見せて、小さくガッツポーズした。「絶対に負けられない試合だった。圧をかける柔道で、先日の借りを返すことができた」。

 14年大会はロンドン五輪銅メダルの海老沼匡らを撃破し、高2で優勝した。リオ五輪の星として脚光を浴びたが、15年2月のグランプリ大会(ドイツ)では3回戦負け。勢いはそがれ、リオ五輪の切符は獲得できなかった。日体大に進学後は、接近戦での力任せの柔道から、距離を保って組み手を取る柔道に変えた。「柔道を考えてするようになった。リオ五輪に出場できなかった悔しさは今でもある。あと3年弱は勝ち続けたい」。

 日本代表男子の井上康生監督は「借りは早く返せと伝えた。頼もしく感じた」と話した。尊敬する選手は五輪3連覇の野村忠宏氏だ。同大会は来夏の世界選手権(ブダペスト)の代表選考会でもある。「世界選手権を3連覇して東京五輪に挑めたら最高。いつかは野村さんを超えて(五輪)4連覇したい」と壮大な夢を語った。【峯岸佑樹】