フィギュアスケートの全日本選手権が今日22日、大阪・門真市で開幕する。世界選手権などの選考を兼ねた重要な大会で浅田真央(26=中京大)、宇野昌磨(19=中京大)ら注目選手がどんな演技を見せるのか。国際スケート連盟(ISU)技術委員で、国内外でジャッジとして活躍する岡部由起子氏に見どころを聞いた。【取材・構成=高場泉穂】

 -羽生が急きょ欠場し、宇野に初優勝のチャンス。今季の成長は

 岡部氏 羽生選手はじめ先輩たちを追う立場が、成長の助けになっていると思います。スピンも上手で、人を引き込む演技ができるのが魅力。コーチ陣が彼の良さをうまく引き出す振り付けをしています。

 -4回転フリップなどジャンプは高い成功率

 岡部氏 グランプリファイナルでの6分間練習を見ていて、大丈夫なのかなと思いましたが、本番ではやるべきことができる集中力があります。トップ選手の仲間入りしたと言えるでしょう。

 -結果を残せていない浅田の状態が気がかり

 岡部氏 けがの影響で、ジャンプの不調が続いています。基礎点の低い構成で調整していますが、回転不足などの影響でさらに点数が低くなっています。試合では精神的につらそうに見えました。必要なのはベストの状態で練習を重ねること。本来の力を出すことができればおのずと成績はついてくるでしょう。

 -うまさ、表現力は磨かれているのでは

 岡部氏 同じ曲でショートプログラム(SP)、フリーと違う作品に仕上げているのは素晴らしいです。ただ演技を通じて彼女の不安が、こちら(ジャッジ)側にも伝わってきてしまうのです。余計なことを考えず、昨季のようにスケートが大好きで楽しんでいる気持ちを前面に出した、浅田選手ならではの魅力を発揮できる演技を期待しています。

 -宮原は3連覇がかかる。伸びているところは

 岡部氏 以前は身体の動作が小さなところがありましたが、今季は強さ、優雅さが出てきました。体も細かったのですが、筋肉もつき、体全体を使った動作で演技が大きくなってきました。演技の「強さ」は宮原選手が目標としている1つですが、努力してできるようにするところは脱帽です。

 -昨季2位の樋口はシニアデビュー。これまでの試合で見えてきたのは

 岡部氏 課題はジャンプの跳び損じです。彼女はジャンプの高さ、力強い滑りなどが魅力ですが、今は表現力を磨くことに集中し、少し彼女の良さが薄れてしまっている印象です。表現することと力強さとの共存が難しいところでしょう。

 -本田らジュニアの活躍は

 岡部氏 本田選手には生まれながら持った華を感じます。今はムラがありますが、ベストの演技が常にできるようになれば評価はぐっと上がると思います。

 ◆全日本選手権で決まる主な大会のシングル選考基準 世界選手権の代表は男女各3人。1人目は全日本選手権優勝者、2、3人目は同大会の2、3位、グランプリファイナル出場上位2人、全日本選手権大会終了時点でのISU世界ランキング上位3人などの基準から総合的に判断する。4大陸選手権は、全日本選手権10位以内などの基準から男女各数人が選考される。アジア冬季大会(2月、札幌)は男女各2人。1人目は全日本選手権大会優勝者。2人目は、参加資格のある選手の中で全日本選手権上位6人などの基準から選ばれる。

 ◆岡部由起子 おかべ・ゆきこ。茨城県生まれ。元ペア・シングル選手。79年全日本選手権のペアで優勝。当時のパートナーは無良崇人の父無良隆志氏。81年女子シングル3位。現在はISUのテクニカルコントローラー、レフェリー、ジャッジとして国内外で活躍。16年から、ISU技術委員。