フィギュアスケート全日本選手権の男子で初優勝した宇野昌磨(19=中京大)が26日、18年平昌五輪会場と同じ韓国・江陵での4大陸選手権(来年2月16日開幕)で4回転ループを導入する意欲を見せた。決めれば羽生結弦(22=ANA)と並び3種類の4回転ジャンプに成功。基礎点だけで3点の上乗せも見込まれ、五輪金メダルへ夢は広がる。この日は大阪・東和薬品ラクタブドームでエキシビションに出演した。

 初の日本一から2日がたち、宇野の気持ちは4大陸選手権に向かっていた。「昔のこと、先のことじゃなく、今、何ができるかを考えたい」。与えられた約2カ月の練習時間。「いきなり(成功率)0%になるかもしれないので…」と前置きしながらも、胸にしまう野望は隠さなかった。「ループは…。調子が良ければやろうと思います」。

 4大陸選手権は18年平昌五輪で使われるリンクで戦う「プレ五輪」。そこに自身初の4回転ループを盛り込むかもしれない。日本で羽生しか跳べないジャンプを、最近2週間の練習で猛特訓してきた。全日本選手権の構成に入れないことを決めながら、22日の前日練習でもあえて挑戦。見事に着氷し「近いうちに入れられるようにしたい」と自信を深めていた。この日のエキシビションでも果敢に4回転ループに挑戦。転倒したが大喝采を浴びた。

 今年4月のチームチャレンジカップでは4回転フリップを世界で初めて決め、トーループも習得済み。そこにループを加えれば、羽生と同じく4回転ジャンプ3種類の使い手になる。全日本選手権のプログラムに新兵器を組み込むと仮定すれば、基礎点だけで3点の上乗せが可能。グランプリファイナル3位の現在地から世界一へ視界が開ける。

 来年3月には五輪の出場枠が決まる世界選手権が待つ。五輪未経験の19歳ながら「いつもは個人戦だけれど、枠取りは団体戦に近い。日本代表として、それらしい演技をしたい」と責任感が強まってきた。練習の大切さを常に掲げ、全日本選手権初優勝の喜びではなく「練習が無駄じゃなかったことがうれしかった」と小さな成功に泣ける男が宇野だ。成長のスピードは誰にも予測できない。【松本航】