初優勝を逃した東海大のフランカー磯辺裕太主将(4年)は、痛々しい姿で記者会見場に現れた。

 2日の同大との準決勝で右耳を激しく負傷して退場した。「何針縫ったか分からない」と言い、この日は“特製耳当て”をして出場。過去2度の先輩たちのリベンジを果たすために「耳が取れても良い」という覚悟で決勝戦に臨んだ。痛みを感じさせない激しいタックルを連発し、この日は右肩を脱臼して前半で退いた。「強みを出して良いこともあったが、ミスもあって『ここぞの集中力』に欠けた。悔しい…」。磯辺主将は目を真っ赤して振り返った。

 愛車は高校生の頃から7年間乗っているボコボコに傷ついた「ママチャリ」だ。全体がさび付いており、カゴやギアも壊れている。8日の練習後には「この自転車のように体がボロボロになるまで泥臭いラグビーをしたい」と意気込んでいた。木村季由監督も「背中で引っ張ってくれる頼もしいキャプテン」と、絶大の信頼を置いていた。

 序盤は王者相手に14点差をつけたが、後半は帝京大に底力を見せつけられた。「打倒帝京」。この言葉を胸に選手166人がこの日を迎えた。全身全霊をかけて戦ったが、初優勝とはならなかった。「三度目の正直にしたかった」。会見場には、心身ともに憔悴(しょうすい)した“闘将磯辺”がいた。