サントリーが神戸製鋼を27-15で破り、4季ぶり4度目の優勝を果たした。昨季は9位に低迷も、今季就任した沢木敬介監督(41)の下でチームが団結。史上3度目のリーグ全勝と同時に、WTB中づるがトライ王、SO小野が得点王に輝くなど完全制覇で復活を遂げた。21日の日本選手権準決勝(花園)で学生王者の帝京大と対戦する。

 待ちこがれた勝利の美酒は格別だった。試合後のロッカールーム。サントリーの選手たちは自社製のビールで4季ぶりのVを祝うと、廊下まで何度も歓喜の声を響かせた。就任1年目で全勝優勝を果たした沢木監督は「チャレンジャーとして、丁寧に、ハングリーに戦ってきた結果だと思う」。クールな指揮官が誇らしげに胸を張った。

 積み重ねてきた努力がピンチで生きた。後半5分にトライで6点差に詰め寄られると、直後にWTB江見が故意の反則で一時退場となった。敗れれば2位ヤマハ発動機に逆転で優勝をさらわれる苦しい場面。だが、そこからスクラムで圧倒し、ボールを奪取した。勝負どころでの団結が、チームの成長を示していた。

 どん底から誇りを取り戻すための1年だった。過去3度のトップリーグ制覇を誇る強豪も、優勝から3シーズン遠ざかり、昨季はリーグ創設以来最低の9位に沈んだ。今季掲げたスローガンは「サントリープライド」。優勝した12年度にヘッドコーチを務めていた沢木氏が監督としてチームに復帰。「ぬるま湯だった」と大胆な改革に着手した。

 2年目のSH流を「意識が高い」という理由で主将に抜てきし、肉弾戦で倒れた選手は2秒以内に立ち上がることを義務付けた。テレビが1台しかなかったクラブハウスの食堂には3台のパソコンを追加。前後左右、ドローンで空撮した練習の映像を徹底的に分析させ、「数センチ、数秒」にこだわる意識を植え付けた。

 戦術も大きく変えた。かつてのボールを保持して攻撃するラグビーを捨て、空いているスペースを素早く突く新たなスタイルを追求。「世界のラグビーは進化しているのに、サントリーのラグビーだけは進化していない」。厳しい口調で成長を促し続けた。

 戦う集団となったチームは勝利を重ねることで自信と強さを手に入れた。全勝に加え、キッカーのSO小野は187点で得点王、WTB中づるはリーグ最多17トライ。主要個人タイトルも含めた完全優勝だった。

 大きな目標を達成したが戦いは続く。21日には大学選手権8連覇を果たした帝京大との日本選手権準決勝が控える。指揮官は「ここで僕が喜び過ぎてもしょうがない」。表情を引き締め2冠達成を誓った。【奥山将志】

 ◆サントリー・サンゴリアス 1980年(昭55)創部。サンゴリアスは太陽(サン)と巨人(ゴリアテ)に由来。東京・府中市に練習場を構える。清宮克幸(現ヤマハ発動機監督)やエディー・ジョーンズ(前日本代表ヘッドコーチ、現イングランド代表同職)らが監督を歴任。7人制を除き13個の全国タイトルを獲得。マスコットはゴリラの「サンゴリアス君」。

 ◆リーグ全勝 サントリーは12年度以来2度目。07年度に三洋電機(現パナソニック)も記録しており、今回のサントリーがリーグ3度目。07、12年度はともに13試合制で、15試合制では初めて。12年度は2位東芝(10勝3敗)に勝ち点13差をつけ圧倒した。