世界5位の錦織圭(27=日清食品)が、今季4大大会初戦をフルセットの死闘で制した。同45位のクズネツォフ(ロシア)のスピードボールに手を焼きながらも5-7、6-1、6-4、6-7、6-2の3時間34分で下し、7年連続で初戦を突破。これで4大大会の5セット試合は13勝3敗、全豪に限れば4戦全勝と無類の強さを誇る。2回戦では同72位のシャルディー(フランス)と対戦する。

 はらはら、ひやひやさせながらも最後は勝つ。錦織劇場の幕開けだ。生粋の負けず嫌いが、最終セットで闘争心に火をつけた。全豪では負けなしの5セット目。たたみかけ追い込むと、最後は相手が力尽きてダブルフォールト。「タフな試合だった。でも、5セット目は本当に集中した」と自画自賛した。

 相手の高速ボールと球足の速いコートに手を焼いた。直線的に飛んでくる球は、バウンドしてから低く滑る。それを持ち上げて返球するため、上からたたく攻撃に転じることが難しい。「(最初は)対応しきれなかった。彼の球質には苦労した」。全仏では山なりの球を使い、ウィンブルドンではバウンドして球速が落ちるため対応できた。

 フルセットになって一気にギアを上げ、ペースをにぎった。4大大会の5セット試合は12勝3敗、しかも全豪では負けなし。決して長い試合が好きなわけではない。この試合も「4セットで終わるべきだった」と反省する。ただ、幼い頃、トランプで負けそうになると、机をひっくり返して帳消しにする負けず嫌い。その性分はプロになっても変わっていない。

 4大大会で初の16強入りした08年全米3回戦のフェレール戦が、4大大会での自身初の5セット試合だった。鮮明に覚えているという試合は、第4セットを捨てて、最終セットにかけるという賭けに出た。そして、初めてトップ10からの勝ち星をフルセットで挙げた。その時から「5セットになれば何とかなるという自信がついた」と言う。

 14年全米準優勝の時は4回戦でラオニッチ、準々決勝でバブリンカをともに4時間以上のフルセットで撃破。ついた愛称が「マラソンマン」だ。この日は「そんなに余裕がなかった」と言うが、マラソンマンの面目躍如。5セット目は「やっと自分から攻撃的にできた」と圧倒。気温30度超の暑さの中、3時間34分の消耗戦を制した。

 2回戦ではジュニア時代からのライバル、シャルディーと対戦する。相手は1回戦を相手の途中棄権で、錦織の50ゲームに対し、4ゲームしか戦っていない。それでも「まだ1回戦。3、4回戦なら棄権した人を恨みますけど」。まだ十分に余裕がある。【吉松忠弘】

 ◆最終セット勝率 錦織の最終セットの歴代勝敗は、この日の勝利で101勝30敗となった。勝ち星では、トップの歴代選手に比べ、まだ実働期間が短いため、勝数は100位以下。トップはコナーズ(米国)の232勝。勝率ではコナーズは7割に達しておらず、7割を超えているのは上位5人だけ。そのうち、錦織とジョコビッチだけが7割5分を超えている。

 ◆WOWOW放送予定 17日午前8時55分~、午後4時50分~、WOWOWライブ。男女シングルス1回戦。生中継。放送時間変更の場合あり。