プレーバック日刊スポーツ! 過去の2月7日付紙面を振り返ります。2014年の1面(東京版)はソチ五輪フィギュア団体戦男子SP首位発進でした。

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<ソチ五輪:フィギュアスケート>◇2014年2月6日◇団体・男子ショートプログラム

 フィギュアスケート団体戦は男子ショートプログラム(SP)で幕を開け、世界ランク1位の羽生結弦(19=ANA)が97・98点で首位発進を決めた。4回転ジャンプを成功させ、自身が持つ世界最高99・84点に迫る高得点で、メダルを狙う日本に大きな勢いをつけた。初対決となったあこがれの06年トリノ五輪金メダリストのプルシェンコ(ロシア)にも勝利した。

 日本フィギュア勢最年少の19歳が最高のスタートを決めた。羽生は演技を終えると高く掲げた右拳を強く握って、納得の表情を浮かべた。最終滑走の10番目に登場すると、「今季は外していない」と絶対の自信を持つ冒頭の4回転ジャンプを高速回転で下りきる。続くトリプルアクセル、連続3回転ジャンプも危なげなく成功。得点を見て1位が確定すると、会場に向かって丁寧にお辞儀した。

 プルシェンコの存在が鍵だった。9歳の時にテレビで見た02年ソルトレークシティー五輪。ロシアの新旧エース対決、ヤグディンとの決戦に敗れて銀メダルに終わる姿をみた。「絶対王者の対決」「五輪への夢を持つきっかけになった」と引かれたのは敗者の方。スタイルをすぐにまねた。髪形を同じマッシュルームカットにし、自分のサインもキノコを模したものにした。男子では珍しいビールマンスピンを滑るのも、“和製プルシェンコ”になりきっていたから。

 くしくも、そのあこがれの存在と初競演となったのが五輪の舞台だった。3日、降り立ったソチ空港で口にしたのは自制心のある言葉。「僕は僕なんで、それ自体も楽しめるように一生懸命やりたい。あまりプルシェンコ選手が何か僕の演技に影響するとか、そういうプログラムが変わるとかはないので…」と述べた。

 他選手を意識しすぎて、自らの演技を失った苦い経験があった。世界選手権3連覇中のチャンと争った今季序盤戦。ことあるごとに相手の言動が気にかかり、我を失い、惨敗を繰り返した。だから、あこがれを前にしても同じ轍(てつ)は踏まない。その決意が「僕は僕」発言だった。実際、4日の初練習の時も「飛行機に乗ってきて体が動いていないから」と選手村から“徒歩出勤”。輸送バスを使わない自分のペースの調整を貫いていた。

 団体戦は参加10カ国中5カ国しかフリーに進めない。日本はペアとアイスダンスの力が他国に劣るため、男女シングルで最低でも2位以上がほしかった。プレッシャーのかかる場面で先陣を切る役目だったが、「(日本チームで)一番若いので、元気のいい滑りをみせられればと思います」と意気に感じていた。心は平常に、普段通りの自己流調整に乱れはなかった。

 7日の開会式をはさみ、8日に浅田真央の起用が濃厚な女子シングル、アイスダンスが行われ、フリー進出国が決まる。最年少の全日本王者が作った勢いに乗り、一気にメダルを狙う。

 羽生結弦 (スコアを待つ間)緊張しましたけど、今できることをしっかりできたので、今日は単純に喜びたいです。チームに10ポイントと思って演技したわけじゃないですけど、貢献できるように精いっぱいやった。このリンクにもだいぶ慣れてきた。個人戦に向けて気持ちを切り替えたい。

 ◆フィギュアスケート団体 今大会からの新種目で、10チームが出場する。男女各1人、ペア、アイスダンス各1組でチームを構成し、男子ショートプログラム(SP)などの種目ごとに1位10点、2位9点…の順位点が与えられる。SP、ショートダンス(SD)による上位5チームがフリーに進み、SP、フリーの順位点合計で争われる。2種目までフリーでは異なる選手が演技できる。起用する選手については各チームに非公表とすることが通達され、種目ごとに実施前日に発表される。

※記録と表記は当時のもの