女子の高梨沙羅(20=クラレ)が、2季連続4度目のW杯個人総合優勝を決めた。1回目に97・5メートルで首位に立ち、2回目は94メートルにとどまって優勝した伊藤有希(土屋ホーム)に逆転を許したが、合計224・9点で2位に入り、2試合を残して確定した。4度目の総合優勝は、複合で3度頂点に立った荻原健司を抜いてスキーの日本勢単独最多。男子のグレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)が持つジャンプの歴代最多記録に並ぶW杯通算53勝目は、今日16日の第18戦以降に持ち越しとなった。

 まさかの光景だった。1回目に首位に立った高梨は、2回目は94メートルと飛距離を伸ばせず逆転され、2位に甘んじた。W杯個人総合Vは決めたが、男女を通じて最多となる53勝目はお預け。電光掲示板の2番目に名前が表示されると、テレビカメラに向かって頭をペコリ。ほろ苦い五輪のテスト大会初戦となってしまった。「2回目は少し力んでタイミングを外した。やってしまったという感じ」と振り返った。

 不利な追い風だった1回目に97・5メートルを飛び、トップに立った。迎えた2回目は追い風がさらに強まる中でスタート。低い助走姿勢から飛び出したが、高さがない。最後まで空中で抵抗したものの、風をつかみきれず94メートルで落下。足を前後して着地するテレマークも乱れ、伊藤に9・5点差をつけられた。「1回目でジャンプ台の感じをつかみかけていたが完全にはつかめていなかった」と話した。

 大記録を逃しても存在感は変わらない。通算49勝で迎えた年明けの日本開催から、節目の50勝目を挙げるまでに6戦を要した。生みの苦しみを味わいながらも、助走路で重心が後ろになっていることを周囲から指摘され、改善した。1月21日の蔵王大会後、欧州遠征前の3日間は都内の国立スポーツ科学センター(JISS)で再調整。その後の3連勝につなげた。

 今大会前にはジャンプ台の形状が似ている長野・白馬で合宿を敢行した。「やれることはやりたい」と諦めず挑戦し続け、五輪のテスト大会で4度目の女王を決めた。複合で3度制覇した荻原健司を抜き単独最多。歴史的な選手の1人になったことは間違いない。それでも「総合優勝は目標の1つでもあったので、今まで支えてくれたみなさん、ファンの人たちに感謝の気持ちを伝える結果が出せたと思う。ただ、自分への悔しい気持ちでいっぱい」と複雑な胸の内を吐露した。

 今日16日は、仕切り直しの個人第18戦。「課題を整理して頑張りたい」。平昌五輪での金メダル獲得のためにも、同じ舞台で2度負けるわけにはいかない。