女子の高梨沙羅(20=クラレ)がW杯通算53勝目を挙げ、男子のグレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)が持つジャンプの歴代最多記録に並んだ。

 高梨の強さの秘密は? 関係者の証言から探った。

 高梨に懇願され、13年7月に個人コーチに就任した全日本スキー連盟(SAJ)の山田いずみコーチは「幼少時にバレエをやっていたので小さく助走姿勢を組んでいい位置に乗れるし、助走路から飛び出して一瞬で空中姿勢を作れる。無駄な動作がなく空中で空気抵抗を受けない」と分析。男子のエース葛西紀明は「女子で男子と同じような(高い位置に飛び出す)ジャンプができる」と言う。

 山田コーチは、技術だけでなく、集中力も抜きんでているといい「競技中は声をかけても聞こえないくらい集中する。試合に向かう姿勢は誰よりも強い」と証言する。さらに今季は「経験していろんな意見を聞けるようになって(ジャンプの)精度を上げている」と評価。父寛也さんも「悪いところを自分で修正できるようになった」と、成長を感じ取っている。

 90年代に複合のW杯個人総合で3連覇した北野建設の荻原健司監督は「53勝もすごいが、4度目の総合優勝はなかなかできない。気持ちがぶれないし、向上心が強い」と驚く。SAJの成田収平強化本部長は「重圧は相当だが、自分をコントロールできる心の強さがある」と、選手として成熟してきたとみている。