プレーバック日刊スポーツ! 過去の2月21日付紙面を振り返ります。2011年のスポーツ面(東京版)はフィギュアスケート安藤美姫の4大陸選手権完全優勝でした。

 ◇ ◇ ◇

<フィギュアスケート:4大陸選手権>◇最終日◇2011年2月20日◇台北

 ショートプログラム(SP)首位の安藤美姫(23=トヨタ自動車)が、国際大会で自身初、女子史上4人目の200点超えとなる201・34点で完全優勝した。すべての要素を完璧に演じきった。SP2位の浅田真央(20=中京大)も、課題のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を完璧に着氷。今季最高の演技で2位に入り、完全復活を果たした。バンクーバー五輪優勝のキム・ヨナ(韓国)が出場予定の3月の世界選手権(東京)へ、ダブル金メダル候補が盤石の態勢に入った。

 穏やかな喜びが、安藤の顔に広がっていった。演技を終えた直後、自分の体をそっと抱きしめて笑った。昨年12月の全日本選手権のような、全身からにじみ出るガッツポーズはない。むしろ、すべてを出し切った安堵(あんど)の笑み。全日本女王の、新境地を切り開いた姿だった。自身初の完全優勝に「体のコンディションが100%ベストでなくてもこういう演技ができたのは、成長が見えたかな」と喜びを口にした。

 今季初めてSP首位で迎えたフリーは、すべてが完璧だった。前日は極度の貧血で立てなくなるほどだったが「薬を飲んで痛みも出てなくて、ベストではないけど昨日より良かった」。最初の3-2回転の連続ジャンプに始まり、得点が1・1倍になる後半8つのジャンプまで、その美しさに13点以上も加点がついたほど。これでフリーは今季5戦いずれも1位。女子史上4人目の国際大会200点超えも果たした。「結果を考えずに、自分の演技だけに集中しているので、1位がどうというのはないんです」と照れ笑いした。

 自分を見つめる心が、大きく成長した。今回は大会期間中でもオフを多めに取った。1日2度の公式練習は1度だけ。一日中リンクから離れた日もあった。この日朝に35分間割り当てられた公式練習は、10分残して切り上げた。体調が悪かったからではない。「仕上がったからという感じでした」と関係者。ただやみくもに練習する姿はない。自分の体と心に相談し、決断できる力を身につけた。

 台北の街では小籠包を何度もたいらげたが、野菜中心の食事は変えなかった。「前はマイナスに考えてしまって演技をミスしてしまうことが多かったけど、昨年ぐらいからやるべきことをしっかりやるという意識ができている。少し成長したからかなぁ」と笑った。

 1カ月後に、東京で世界選手権を迎える。4年前の東京開催では初めて世界女王に輝いた。「当時は靴が合わなくて、演技よりケガが悪化しないかを考えていた。あの時よりもちゃんと意識を持って、きちんとメダルを取れるように頑張りたい」。今大会、安藤の強さは、さらに磨かれた。

 ◆安藤美姫(あんどう・みき)1987年(昭62)12月18日、名古屋市生まれ。8歳でスケートを始め、愛知・城山中から中京大中京高に進学。02年ジュニアGPファイナルで、女子で史上初の4回転ジャンプに成功し優勝。04~05年シーズンからシニアに転向し、06年スケートアメリカでGP初優勝。07年世界選手権で日本女子4人目の女王に輝いた。トリノ五輪15位、バンクーバー五輪5位。コーチはニコライ・モロゾフ氏。162センチ、49キロ。

※記録と表記は当時のもの