プレーバック日刊スポーツ! 過去の2月27日付紙面を振り返ります。2009年の1面(北海道版)は世界選手権ノルディック複合団体で日本が14年ぶりに金メダル獲得でした。

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<スキー:世界ノルディック>◇8日目◇26日◇チェコ・リベレツ

 強い複合ニッポンが帰ってきた。団体で金メダルに輝いた。小林範仁(26)湊祐介(23=ともに東京美装)加藤大平(24=札幌ノルディックク)渡部暁斗(20=早大)の4人で臨んだ日本は、前半ジャンプを5位ターン。大混戦の後半距離で粘り、アンカー小林がドイツと同タイムの48分32秒3でゴールしたが、日本が先着した。距離が苦手のエース高橋大斗(土屋ホーム)を外すメンバー選考もはまり、五輪、世界選手権では95年世界選手権「金」以来7大会14年ぶりにつかんだ表彰台が、頂点となった。

 待ちに待った“お家芸”の復活だ。複合ニッポンが、表彰台の、それもてっぺんに戻ってきた。

 前半ジャンプは首位フランスに24秒差の5位ターン。メダル圏内で迎えた後半距離は、粘りに粘った。ノルウェー、ドイツ、フランスとのデッドヒート。ゴール前はドイツとの一騎打ちだった。ほぼ同時にゴールに入ったが、小林の足がほんの少しだけ早かった。かつては「前半逃げ切り型」で世界を席巻した日本だが、今大会のチームは「後半追い上げ型」。ジャンプ、距離を高いレベルで融合させた新世代が金メダルをつかんだ。

 エース外しが吉と出た。今季ルール変更でジャンプは2回から1回に変わった。ジャンプで差がつかなくなり、距離の比重が高くなった。今季W杯で3位に入っているとはいえ、高橋は典型的な「前半逃げ切り型」。22日の個人戦では前半ジャンプは19位も、後半距離28位で21位に沈んだ。河野孝典ヘッドコーチら首脳陣は、個人戦で入賞した2人(5位小林、6位湊)に次ぐメンバーに、33位ながら距離は9位の渡部と、高橋より上りに強く、ジャンプも計算できる加藤を選択した。

 河野ヘッド シーズン初めの戦力からは、予想していなかった結果。(目を潤ませながら)ここにきて、個々が成長し、チームとしても成長した。

 4人にとってはリベンジの場でもあった。前回07年の札幌大会。個人スプリントで全治3カ月の重傷を負った高橋を欠いた日本は、今大会と同じ4人で団体戦に臨み、8位と惨敗した。選手層が薄い−。その払しょくのため、今季は若手をW杯に積極的に参戦させた。ジュニア世代もW杯(の格下に当たる)Bに出場させた。経験を積ませ、競わせ、伸ばす。首脳陣の考えは、ジャンプが苦手な小林がフォーム改造に取り組みなど、世代を越えた相乗効果を産み、チームを底上げした。

 92年アルベールビル五輪から、世界選手権、五輪で4大会連続で金メダルに輝いた日本。起点は、91年世界選手権でつかんだ銅メダルだった。10年バンクーバー五輪は、1年後に迫っている。首位で2走加藤につないだ1走の湊が「自分の役目はできるだけ前と縮めて(加藤)太平を楽にさせることだった」と言えば、加藤は「僕はつなぐのが役目だから」と控えめに笑った。メダルは欲しかったが「金」は“想定外”だった。チームでつかんだ、新世代でつかんだ頂点で、複合ニッポンの第2章が幕を開けた。

 ◆アンカー勝負でメダルの色を「金」に決めた小林 最後は気持ちだけ。絶対に勝つと思って走った。メダルはあると思っていた。あとはメダルの色だけだった。これはみんなの勝利。今日で日本のコンバインド復活が疑いのないものになった。

※記録と表記は当時のもの