先月のグランプリ・デュッセルドルフ大会でワールドツアー史上最年少の16歳で制した女子52キロ級の阿部詩(兵庫・夙川学院高1年)が初優勝した。

 「世界のABE」を印象付けた。児玉風香(愛媛・新田2年)との決勝で開始21秒、得意技の袖釣り込み腰で一本勝ち。場内が「オー!!」と沸き、2階の観覧席では両親と兄一二三(19=日体大)も応援していた。阿部は「家族の応援は心強い。本番の(世界選手権代表選考を兼ねる)4月の全日本体重別選手権が近い中、勝ちきれてホットした。(世界の大舞台も経験し)『どうだ!!』というところが見せられた。目指すは世界の舞台で、一番の目標である東京五輪で優勝を目指したい」と、大きな目をくりくりと動かしながら話した。 

 昨夏の全国高校総体では、まさかの初戦敗退した。周りから「天才」と言われる中、自身が「弱いんだ」と自覚した。原点回帰して兄と同じような攻撃的なスタイルに戻し、今大会までのブレークにつなげた。趣味が睡眠で国際大会の試合前日でも爆睡できる阿部が、18日夜は寝付けなかったという。高校生相手というトラウマもあり、午後9時30分頃に就寝したが、1時間ぐらいは寝られず、19日午前4時30分には起床して稽古で調整した。「高校生には負けられないという気持ちもある。絶対に負けられない。今日、勝ちきれて成長していると思った」と自信をのぞかせた。

 父の浩二さん(47)は娘の成長について「国際大会で優勝して『勝って当たり前』と思われる中、勝ちきれたのは成果。今日はとにかく勝つことが大事だった。親として2人の活躍は頼もしいし、楽しませてもらっています」と話した。

 表彰式後には、リオデジャネイロ五輪女子52キロ級銅メダルで休養中の中村美里(27)が、阿部のもとへ駆け寄る場面があった。同階級は五輪3大会連続で頂点を逃し、阿部の急成長は頼もしい。

 夢は兄妹で20年東京五輪での金メダル獲得だ。本当の本番まであと3年半-。大舞台に強い阿部兄妹の挑戦はまだ始まったばかりだ。