テニス界に“足長おじさん”が誕生だ。配置薬やドラッグストアを展開する富士薬品は22日、本社のあるさいたま市内で会見を開き、12~14歳の女子テニス選手を支援する「富士薬品セイムス ワールドチャレンジプログラム」を立ち上げたと発表した。毎年約4カ月間の海外遠征の費用を3年間支給し、未来のスターを育成する。

 太っ腹に、未来のスターのためには惜しまない。かかる経費は年間数千万円。それでも、富士薬品の高柳昌幸社長は「世界に羽ばたいて、少しでもトップに近づいてくれたら幸せ」と、12~14歳の子どもたちに世界への夢を託す。理由は「私はテニスをするし、テニスが好きだから」と明快だ。

 毎年、全国を9地域に分けて予選を行い、勝ち抜いた64人で決勝大会を開催。12歳の成績優秀者2人を選抜し、14歳までの3年間、支援を続ける。女子にしたのは「過去を見ても女子の方が世界に近い」と、伊達や杉山を生んだ日本女子の活躍から判断した。

 14歳までに限定したのは、プロツアーの規則で、14歳未満はプロ大会に出場できないからだ。14歳になれば賞金を稼げるため「自分の力で頑張ってほしい」。それまでは、海外に行くのは自費で、もちろん収入はない。その部分を援助しようという試みだ。

 欧米のジュニア大会には同年代の世界の有望株が集まる。特に女子は、その年代の日本と世界の体格差は大きい。小さい頃から、大柄な選手と打ち合うことで世界を肌で味わえ、言葉などの国際感覚も身につく。

 すでに昨年11月に12~14歳の各年代2人ずつ計6人を選抜。今年から支援を開始する。14歳の2人の選手は来年卒業し、今年選抜される2人の12歳と入れ替わる。同社にとって、スポーツ業界とのスポンサーやCM契約はあるが、育成プロジェクトは初めての経験だ。「少なくとも10年は続けたい」(高柳社長)。その先には、夢見る4大大会の舞台が待っている。