「鬼門」突破で逆転優勝へ-。30日の男子ショートプログラム(SP)で、羽生結弦(22=ANA)は4回転サルコー-3回転トーループの連続技を失敗し、5位と出遅れた。この連続ジャンプは、フリーでも今季5戦すべて失敗している「鬼門」。目標とするノーミスの演技と3季ぶりの頂点に向け、一夜明けた31日の練習で完璧に決めてみせた。

 「ふがいない」と何度も繰り返したSPから一夜明けて行われた、1日フリーに向けた練習。洞窟のように岩に囲まれたサブリンクに現れた羽生は、最終グループの6人の中で、真っ先にリンクに飛び出した。引き締まった表情で、体から気合がみなぎっていた。

 前夜のSPでは、気付かぬうちに滑走前準備時間の30秒間を超え1点の減点。それでも「集中していけた」と、冒頭で出来栄え点2・43点の美しい4回転ループを跳んだ。だが、次に待つ4回転サルコーからの連続ジャンプでは、降りた瞬間に体勢が崩れ片足がつき、さらに4点を失った。優勝候補ながら98・39点で5位発進。「悔しい気持ちを持ちながら、あと2回あるサルコーに向けて、修正したいです」と、フリーで2度ある4回転サルコーの成功を約束していた。

 2度の4回転サルコーのうち、特に後半の3回転トーループとの連続技は今季5度とも失敗している「鬼門」だ。同じ連続技でも、SPではNHK杯とGPファイナル2戦で見事に決めているが、長い演技の後半に入ってくるフリーでは、その壁を越えられない。だが、この日の練習では2度成功。単独ジャンプと合わせて4回転サルコーは4本すべて成功と、100%の確率だった。不安を取り除き、首位フェルナンデス(スペイン)との10・66点差をひっくり返す準備は整った。

 SPで上位3人が100点超というハイレベルの戦い。フリーと合わせれば、2月の4大陸選手権と同様に合計300点前後の争いになりそうだ。「金メダルをとりたい」。SP後の宣言通り、優勝するには、今季まだ1度も出来ていない完璧な演技が求められる。「鬼門」の連続技を含む4本の4回転をそろえ、3季ぶりに王者に返り咲く。【高場泉穂】