「超級」のホープが地元で輝きを放った。女子78キロ超級の高校2年生、素根輝(そね・あきら、16=福岡・南筑高)が初優勝を果たした。準決勝は前大会の覇者でリオ五輪銅メダルの山部佳苗と約11分の激戦を繰り広げ、決勝で稲森奈見を下した。大会は8月開幕の世界選手権(ブダペスト)代表最終選考会を兼ねており、素根は1歩前進。今日2日に最重量級を除く男女各6階級の代表が決まる。

 前へ、前へ-。勝利への貪欲さが初優勝を導いた。162センチ、96キロと78キロ超級では小柄な素根は、頂点に立っても笑みはない。「攻めて、前へ前へという気持ちで臨んだ。『投げて勝つ』という気持ちが相手よりも上回ったのだと思う」。勝負に徹した高校2年生は終始落ち着いていた。

 山部との準決勝はともに指導2つで延長に突入。延長6分54秒、足が動かない相手の隙を見て得意の体落としで技ありを奪い、勝負あり。五輪メダリストを沈めて勢いづいた。稲森との決勝では指導2つと劣勢の中、延長2分すぎに再び体落としで技ありを奪って逆転してみせた。

 父行雄さん(55)の影響で小学1年で柔道を始めた。稽古後も自宅車庫を改造したトレーニングルームに毎日2時間こもった。兄3人と一緒にベンチプレスや柱に付けたロープを使って投げ技を磨き、中学までに全国を3回制覇した。地元では「無敵女子」と呼ばれ、14歳の時に、17歳以下で争う世界カデ選手権を5試合オール一本勝ちで制覇。相手に接近し、大内、小内刈りなどの足技で攻める。高校の1年間で体重は10キロ増え、筋力もアップ。比例するように、昨年12月のグランドスラム(GS)東京大会2位、2月のグランプリ(GP)デュッセルドルフ大会3位と国際舞台で実績も伸ばしている。

 最重量級の世界選手権代表の最終選考会は全日本女子選手権(16日)だが、素根は予選敗退したため出場できない。ただ、代表はそれまでの成績も加味して決めるため、日本女子の増地監督は「今回も選考材料の1つになる」とした。同い年で仲の良い、女子52キロ級阿部詩(うた)と「東京五輪で金メダル」を目標とする。「2人で代表を引っ張りたい」。16歳の成長が止まらない。【峯岸佑樹】

 ◆素根輝(そね・あきら)2000年(平12)7月9日、福岡県生まれ。小1で柔道を始め、小6で全国小学生学年別大会45キロ超級優勝。全国中学生大会では70キロ超級で2連覇。15年世界カデ柔道選手権優勝。昨年12月のグランドスラム東京大会準優勝。得意技は大内刈りと体落とし。趣味は音楽鑑賞。家族は両親と兄3人。162センチ、96キロ。血液型A。