スポーツクライミングのスピードは、日本では公式サイズのウォールがほとんどなく、練習場所確保が課題だった。16日に、国内最大級のスピード専用ウォールが東京・昭島で本格的に稼働。国際規格に合った専用ウォールの完成によって、スピード強化の促進が期待されている。

 ボルダリング、リードの日本代表クラスの選手はイタリア、フランスなどでの強化合宿でスピードにも取り組んできた。何回か登るうちにホールドの位置に慣れ、タイムは伸びる。ただ、世界トップとの経験値の違いは如実だ。選手の中には「焦るとホールドを取り損ねて落下する」との感想も漏れてくる。

 練習場所の確保が急がれる中、昭島の専用レーンは追い風になる。楢崎智亜は「どんなウォールか見てみたいです」と、興味を示す。管理する昭和飛行機工業・賃貸施設1部の中野敬三課長は「立地的に昭島は遠いと感じるかもしれませんね」と言うが、4レーンの壁は間近で見ると壮観だ。

 完成を記念し、明日16日に男女の世界記録保持者がエキシビションを行う。男子は14年9月に5秒60の世界記録をたたき出したダニエル・ボルディヤフ(25=ウクライナ)。日本のCMに出演し、スーツ姿で華麗な動きを見せている。女子は15年5月に7秒53を樹立したユリア・カプリナ(23=ロシア)だ。

 男子は世界ランキング1~3位、女子は同1、4、6位が集う。日本のスピード強化への道は、まず世界の速さを実感するところから始まる。【井上真】(おわり)