2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の後利用問題で政府与党などは、大会後に球技専用に変更し、陸上の国際大会ができる競技場を東京都内の他の場所に整備する方向で調整することが28日、複数の関係者への取材で分かった。

 スポーツ関係者にとって、苦渋の決断となる。15年7月に白紙撤回となった故ザハ・ハディド氏が設計した新国立案(ザハ案)では一部座席が可動式だった。陸上時は座席を収納し、サッカーやラグビーの使用時は座席をトラック上に引き出し増席し、ピッチとの距離も縮まる計画だったため、共用が可能だった。

 しかし、整備費が2520億円にまで膨張したことが批判され、安倍晋三首相が白紙撤回を決断。その後、整備費が約1490億円の建築家・隈研吾氏が設計した案が採用された。

 白紙撤回後の新たな計画を進めるに当たり国は15年8月、20年東京大会までの仕様を取り決めた。だが、大会後の利用までを決定するには時間が足りなかったため、新計画の建築と並行して文科省内のワーキングチームで議論することとなった。そして昨年9月、後利用に関する論点整理をまとめていた。

 ザハ案時からこれまで、関係者の中では常設サブトラック実現のため苦慮し、アイデアを絞り出してきた。明治神宮外苑の軟式球場の地下を掘り、災害時の都民の避難場所と非常食などの備蓄倉庫とし、地上部分は人工芝とトラックという簡素な構造物にする案。「市民の命を守る」という神社のあり方とも合致し「常設」の可能性を模索した。

 しかし、20年という期限があり、それらの計画は時間経過とともに実現が難しくなり、陸上と球技の共存は困難になった。