一皮むけた。100キロ超級の王子谷剛志(24=旭化成)が決勝でウルフ・アロン(21=東海大)に延長で優勢勝ちし、2連覇を達成した。05年の鈴木桂治以来の12年ぶりの連覇で、初の世界選手権代表の切符を手にした。

 東海大OBと現役の対決。186センチ、145キロの王子谷がウルフを圧倒し、先輩としての意地を見せた。右手で奥襟をがっちりつかみ、得意の大外刈りを何度も仕掛けた。途中、両者が顔から出血し、王子谷は唇を切った。血が止まらず、道着や畳上に垂れて、一気にギアチェンジ。鬼気迫る表情で果敢に攻め、指導を奪って優勢勝ちした。

 「(大学の)後輩だったので何がなんでも勝つという気持ちで臨みました。最高です!!」と喜びを爆発させた。

 昨年の全日本選手権は日本一に立ったが、リオデジャネイロ五輪代表の座は原沢久喜に奪われた。「見返してやる」。自身にそう言い聞かせながら、稽古を続けてきた。リオ五輪の時は気を紛らわすためにテレビを見ずにゲームに没頭。「実況パワフルプロ野球」の選手育成をひたすらやっていた。「柔道は好きだけど見なかった。見たらたぶん、1週間自宅から出られなかったと思う」。

 平常心でマイペースが“王子谷流”だ。28日の講道館での会見前には近くの喫茶店でモンブランを食べて、会見後には豆乳鍋とすき焼きの「鍋二刀流」で気分転換した。

 「癒やし系」で先輩後輩からも慕われる。今大会は東海大相模高時代の同級生、松雪直斗と五十嵐唯大も出場した。3人は「高校3冠」の連続記録を止めてしまった仲間で、王子谷は連覇と同じくらい同時出場を喜んだ。「あの時の3人が日本武道館の畳の上で一緒に戦えるとは思わなかった。不思議な感じだし、本当にうれしく思う」。畳を降りると、癒やし系の王子谷に戻っていた。