東京で初開催となったW杯予選で、期待の若手が好スタートを切った。15年世界ユース選手権で日本人初優勝を果たした緒方良行(19=福岡県連盟)が、A組を1位通過した。世界選手権王者楢崎智亜(20)、女子の野中生萌(みほう=19)野口啓代(27)らも順当に予選を通過。7日の準決勝、決勝は、チケットが完売したほど盛り上がる中で実施される。

 A組43人の多くがはね返された第4課題を、緒方は一撃(1度目のトライで完登すること)した。「僕の得意な課題でした」。言葉は力強い。「僕はピンチ(指で挟む力)に自信があります。核心部分のホールドをつかめたので、次のホールドへ手を伸ばせました」。

 A組で第4課題完登は3人。世界王者楢崎智、今季3戦でいずれも表彰台に立った渡部、海外勢も軒並み失敗した。一方、緒方は、楢崎らが一撃した前半課題で苦戦した。「僕はバランス系が苦手です。お客さんの反応で、他の選手が早くに登っていたので、焦りました」。ボルダリングはライバルが登れなかった課題をものにすれば逆転できる。A組1位通過は、まさに競技の醍醐味(だいごみ)だった。

 練習場所のジム「DOG WOOD」(川崎市)の常連客も応援にかけつけた。「海外と違って知ってる人の声援が聞こえるので、それが本当に僕を盛り上げてくれました」。小学5年の時、テレビ番組「SASUKE」にあこがれて、ボルダリングにはまり、天性の指の力を味方に世界と戦う。楢崎智に「緒方くんは本当に強い」と言わせる大器。藤井も予選後に「日本男子は誰が代表になるか分からない。苦しいですね、毎回毎回」とつぶやいた。

 緒方は「優勝したいです。でも、まず1つずつです。目の前を考えて、まず決勝に行きたいです」と言った。日本代表の強さはこの厳しいせめぎ合いの中から生まれる。【井上真】

 ◆緒方良行(おがた・よしゆき)1998年(平10)2月4日生まれ、福岡県久留米市出身。小5で姉円香(まどか)さんが見つけたジムでボルダリングに出合う。中学3年から4年連続国体出場。明善高から神奈川大人間科学部へ進学。16年W杯米国大会4位、同年アジア選手権優勝。父博機(ひろき)さん(56=自営業)母智子さん(50)姉円香さん(23)千仁(ちさと)さん(21)弟万佐也(まさや)さん(15)の6人家族。171センチ、55キロ。

 ◆大会方式 八王子大会は予選に男子85人、女子54人が出場。男女とも上位20人が7日の準決勝に進出する。男女ともA、B組に分かれ、異なる5課題に取り組み、A組上位10人、B組上位10人が準決勝に進む。準決勝、決勝は4課題。制限時間は予選、準決勝が5分、決勝が4分で時間内なら何回でもトライ可能。決勝は6人が進出。