20年東京五輪での実施が決まってから国内で最初のW杯で、男子の昨年の世界選手権覇者、楢崎智亜(20=栃木県連盟)は3戦連続の2位に終わった。決勝で今季初優勝へあと1完登と迫りながら、最後の第4課題をクリアできず、アレクセイ・ルブツォフ(ロシア)に逆転を許した。2連勝を狙った渡部桂太(23)は3位。

 決勝では誰も登れなかった第1課題を、残り1秒で制し楢崎にスイッチが入った。第2、第3課題を一撃(1度目のトライで完登すること)で仕留める。最終課題を残し、楢崎は3完登、ルブツォフは2完登。楢崎はただ、自分の競技に集中し、完登すれば今季初勝利だった。

 だが、第3課題の最後に右の手のひらを痛めていた。試合後にアイシングした右手が痛々しかったが、敗因として聞かれると即座に否定した。「それでも絶対に登らなきゃいけなかったんです」。圧倒的な優位に立ちながら、焦りが焦りを呼んだ。第4課題を計3度トライして失敗し、流れは後からトライしたルブツォフに移った。

 競技への注目が高まる中、東京五輪での実施が決まってから国内初のW杯に並々ならぬ決意で臨んでいた。「今までで一番悔しい。めっちゃ悔しい。泣いちゃいました」。そう言った楢崎は表彰台でも涙を浮かべ、ショックの大きさを隠さなかった。「第4課題は前の人が登っていた」と、最終課題にチャレンジする前に、優勝へ王手をかけていた緊張感に支配されていた。