パラリンピック北京、ロンドン連覇の元世界王者・国枝慎吾(33=ユニクロ)が、男子シングルス2回戦で世界4位で第3シードのグスタボ・フェルナンデス(23=アルゼンチン)に6-7、4-6でストレート負けした。

 右肘痛による長期休養から復帰2戦目。今大会が約7カ月ぶりの本格的な国際大会になったが、本来の国枝を取り戻すきっかけになる黒星だった。

 「久しぶりにこのレベルでプレーして、最後の詰めの部分で精度を欠きました。自分のペースに持っていけるところもあったんですが…」。国枝は安堵(あんど)と悔しさが入り交じった表情で試合を振り返った。

 4つのダブルフォールトを犯すなどいきなり3ゲームを連取されたが、そこからフェルナンデスの強打に食らいついた。タイブレークでも1-4と先行されながら1度は逆転してセットポイントもつかんだ。第2セットも1-3から世界一のチェアワークでコートを動き回り、スタンドを湧かせた。バックのリターン、クロスが切れていただけに、フォアのウイニングショットが決まっていれば、勝負は分からなかった。

 右肘痛に15年の秋から悩まされ、昨年4月に手術を受けた。その後も断続的な痛みが続き、リオデジャネイロにはステロイド注射を打って出場した。そして、10月のUSTA全米選手権を最後に試合から離れた。完治させるために4カ月の完全休養。今年3月から本格的な練習を再開し、4月の神戸オープンで復帰優勝を果たして迎えた今大会が、7カ月ぶりの本格的な国際大会になった。

 1回戦で藤本佳伸を圧倒した後の自己評価は「20%」。この日の敗戦後は「30~40%」になった。「戻ってきて、ゲームのやり方を思い出してきた。それが今回の目的でもありますから」。15年までは16勝1敗と圧倒していたフェルナンデスは、くしくも実戦を離れる前の最後の相手。昨年から3連敗になったが、収穫も大きかった。

 「自分の立ち位置が分かってきます。まだまだ練習、打ち込みが不足している。まあ、3カ月後には仕上げられるかな、と思います」。世界1位を独占していた最強王者が、今は11位に落ち込んでいる。07年からグランドスラム、五輪の世界タイトルを毎年必ず手にしてきたが、昨年は無冠に終わった。それでも6度制している全仏はワイルドカードで出場が決まっている。「コテンパンにやられなくてよかったです」。8強止まりだったリオから20年東京へ。ジョークにまぶして国枝が完全復活への道を進みだした。【小堀泰男】