白井健三(20=日体大)が、9連覇した内村航平(28=リンガーハット)と0・350点差の2位に入り、個人総合として初の世界選手権(10月、カナダ・モントリオール)代表に決まった。床、跳馬のスペシャリストからオールラウンダーへと著しい成長ぶりをみせ、20年東京五輪へ大きな1歩を踏み出した。内村も世界選手権の代表入りした。

 NHK杯の1週間前、白井の元に内村から電話があった。「どう?」と調子を聞かれ「僕は(2位の田中)佑典さんを捉える準備はしています」と堂々と答えた。全日本選手権3位から巻き返し、自身初の個人総合での世界選手権代表へ。頭の中にはシナリオが出来上がっていた。

 試合は予想通りに進んだ。最初の床運動では「シライ3」ことH難度の伸身リ・ジョンソン、G難度の抱え込みリ・ジョンソンと大技を2つ決め、15・900点の高得点をマーク。首位に躍り出た。だが、2位内村に0・5点差を付けて迎えた最後の鉄棒の着地でやや乱れ、逆転を許した。「最後にひっくり返されるところまで予定通り」と謙遜したが、王者をぎりぎりまで追い詰めた。

 床で2度の世界王者となり、昨夏のリオデジャネイロ五輪では跳馬で銅メダル。この2種目ではスペシャリストだが、13年から日本代表として内村を近くで見て追いかけるうち、個人総合への思いは膨らんでいった。20年東京五輪に向け、個人総合の強化に励んできた。苦手なつり輪に積極的に取り組むなど、床、跳馬以外の技術が飛躍的に伸びた。水鳥寿思日本代表監督は「内村とともにメダルを狙える」と喜んだ。

 1週間前の電話では、内村から「お手柔らかに」とけん制されていたが、白井にはまだ「勝てる気持ちはなかった」。だが、この日気持ちは動いた。「世界選手権や、来年に向けては(自分の)予想に反した最後になるようにしたい」。背中を追ってきた内村に勝つシナリオも、もう少しで描けそうだ。【高場泉穂】

 ◆世界選手権代表選考 今回は個人総合、種目別のみ。代表は男子が最大6人、女子が4人。個人総合は全日本選手権と5月のNHK杯の男女上位2人を選出。種目別は、男子は6月の全日本種目別選手権優勝者やNHK杯などの各種目最高得点を出した選手から9月上旬に最大4人を決定。女子残り2人は全日本選手権決勝、NHK杯、全日本種目別選手権を対象に選考する。