早実野球部の昨年のエース右腕が、今度はアメリカンフットボールで甲子園を目指す。最後の夏を迎えた清宮の1学年上の吉村優(18)が、早大では野球から転向してQBになった。始めて4カ月も新人戦で活躍し、素材の良さに大きな期待をされている。全日本大学選手権決勝甲子園ボウル制覇と、違う競技で2度目の聖地を目標にする。

 2年だった15年夏の本大会は控え投手でベンチ入り。昨年は最速134キロで制球力と度胸のよさでエースも、西東京大会ベスト8に終わった。「野球は高校で日本一を目標に始めた。一区切り。違うスポーツで日本一になりたい」。そこでテレビをよく見て興味があり、2年連続甲子園出場のフットボールを選んだ。

 意欲的に入学前の3月には入部し、何よりも「肩は自信ある」とQBを志望した。178センチのサイズ、身体能力の高さ、未経験と思えぬ冷静さ。6月の新人戦2試合ではTDパスも決め、主将として連勝に貢献した。同じQBで高校連覇の坂梨主将は「経験あるボクでも最初は緊張した。落ち着いた度胸はさすがで球筋もいい」と期待する。

 吉村は「走りながら投げるのが難しい。どこを見ればいいとかも。覚えることも多い」と話す。QBは他のポジション以上に戦術の理解度や対応力が要求され、そう簡単ではないが今度こその思いは強い。2年前の夏は甲子園のマウンドに上がれなかった。「ボールは違うが、あそこで投げて日本一になりたい」と目を輝かせた。【河合香】

 ◆吉村優(よしむら・ゆう)1998年(平10)11月10日、東京・八王子生まれ。小3から野球を始め、早実中では2年でエース。早実高2年時に控え投手で夏の甲子園ベンチ入り。3年でエースになり、西東京大会準々決勝で先発も八王子学園八王子に敗れた。178センチ、82キロ。基幹理工学部。家族は両親。