今年で36回目を迎えた全日本クラブ卓球選手権が17日、広島グリーンアリーナで最終日を迎え、女子一般の部1部でMACHIDA BEATS(マチダビーツ、東京)が初出場初優勝を飾った。卓球スクール「TACTIVE」でコーチを務めている、滝浦華奈(23=主将)青木智美(23)酒井詩音(22)須藤洸(ほのか、22)の4人で出場。決勝でフォーネット(愛媛)を3-1で下し、全国の予選を突破してきた参加29チームの頂点に立った。

 強豪のフェニックス卓球クラブ(福井)仙台卓球センタークラブ(宮城)と同組だった、前日16日の1次リーグを3戦全勝で突破。勢いに乗り、この日も初戦の準々決勝で藤クラブ(大阪)に快勝したが、準決勝の新日鉄住金名古屋戦で初めて劣勢に立たされた。最初のシングルスで1勝1敗の後、ダブルスも落とす。初めてのビハインドとなる1-2で迎えた第4、第5シングルス。平均年齢22・5歳の若さで重圧をはね返し、2試合とも勝ち切ってトータル3-2。逆転で初の決勝に駒を進めた。

 頂点を争う相手はベテランぞろいのフォーネット。準決勝で、この大会3連覇中だった早大OG軍団のMILFLUR(東京)を破って、ファイナルに勝ち上がってきた。その熟練の技術に押されたMACHIDA BEATS。まずシングルスの須藤が0-3で敗れて先勝を許してしまう。同じくシングルスの滝浦主将も苦しんだが、フルセットの末に逆転勝ち。最終セットで一時1-5と4ポイントをリードされたが、窮地でも諦めることなく丁寧なショットを続け、試合をひっくり返した。続く青木と酒井のダブルスも制し、第4シングルスで青木が3-0と圧勝。目標の初優勝を確定させた青木が大会MVPに選ばれた。

 初出場で日本一に導いた監督は、この大会からチームを率いる重本幸恵(32)だ。実業団のトップチームの日本生命、サンリツで選手、監督を歴任し、日本リーグ1部を制覇した。13年には、石川佳純らと山口県代表として東京国体に出場し、優勝している。そんな一線級が指導者としてMACHIDA BEATSの強化に着手し、さっそく結果を出した。「選手の気持ちも指導の難しさも、いろんな経験をして分かっているつもり。今回が(監督として)初仕事でしたけど、徐々に伝えていければ。選手たちも、練習不足の中で試合を重ねるたびに成長してくれた。だんだん調子を上げていって、決勝で一気に力を発揮してくれました」と満面の笑みで教え子をたたえた。

 重本監督は優勝が決まると、4人の選手だけでなく水野裕哉ヘッドコーチ(30)とも歓喜のタッチをかわした。水野氏は実業団の東京アート時代に日本リーグ1部でシングルス10勝0敗の成績を残し、09年後期の新人賞に輝いている、こちらも本格派。頼れる右腕とともに、若いチームを底上げしてきた。

 その指導にきっちり選手が応えた。MVP受賞の青木は中京学院大を卒業後、TACTIVEに就職。横浜校でコーチをしながら、今年本格始動したMACHIDA BEATSに参加した。「試合は久々だったので不安でした。仕事があって練習時間が限られていたので」。そう苦笑いしながらも「店長がフォローしてくれたので、私は業後や休みに可能な限りのトレーニングができた方でした」と納得。「全国大会のMVPなんて卓球人生で初めてです…。ビックリしましたけど、たまたま私がもらっただけで、みんなの賞。私たちは4人全員、今年23歳の代なので仲が良く、団結力があったんだと思います」とチーム愛を強調し、全6試合を戦い抜いた滝浦、酒井、須藤に感謝した。

 いきなりクラブNO・1の称号を得たMACHIDA BEATSは、来年秋に開幕する予定の新リーグ「Tリーグ」への参入を目指している。その前段階として、今年秋から日本リーグ2部に参戦する予定だ。青木は「より高いレベルになると思うので、今まで以上に頑張らないと。全体練習の時間も増やしていきたい」と決意を新たにし、重本監督も「卓球人気が高まっていて、新リーグへの楽しみな思いもあります。ただ、その前に自分たちが成長しないと。レベルの高い卓球をしっかり展開できるチームにしていきたい」と切り替えた。

 チームは今後も、関東に7校を展開するTACTIVEで指導や普及に携わりながら、Tリーグ参入への準備を進めていく。体制も整備し、最終的には日本、そして世界のトップクラスへ-。全日本クラブ選手権で初出場Vのインパクトを残したMACHIDA BEATSが、夢への第1歩を踏み出した。【木下淳】