03-04年のリーグ初年度からプレーを続ける近鉄SO重光泰昌(37)が、劇的なDGで逆転勝利をたぐり寄せた。10-12の試合終了間際に相手陣中央のラックから後方でパスを受けると、ドロップキックを選択。約35メートル先のゴールを越え、成功と同時に試合終了のホーンが鳴った。仲間にもみくちゃにされたベテランは「気持ちよかったです」と控えめに喜んだ。

 仲間もまさかの個人技だった。そこまではFWで密集の近場を突く攻撃を展開。DGにつながる重光へのパスも、ワンバウンドになる難しい条件だった。フッカーの樫本敦主将(29)は「パスがワンバウンドになった瞬間、ベンチから『なんでやねん!』って声が聞こえてきました」と裏話を披露して苦笑い。重光はキャッチに徹して攻撃を立て直す選択もあったが、樫本が「うわっ、マジか。頼む!」と祈る中で右足を振り抜いた。

 DGを狙う際にはFWがラック周辺を固めて、落ち着いて蹴る選択肢もある。それでも攻撃の流れの中でのキックを選択した重光は「FWを前に立たせるのも良かったかもしれないけれど、逆に緊張する可能性もある。迷わずに蹴れたのが良かったんじゃないですかね」。自身が「何年前に蹴ったか覚えていない」と語るDGで得た勝ち点4。ベンチで見守っていた坪井章監督(39)は「勝つのは難しいと思ったゲーム。去年は同じ場所の開幕戦(サントリー戦)で1点差で負けた。重光は…。持っているなと思います」とホッとした表情で振り返った。