男子グレコローマンスタイル59キロ級で文田健一郎(21=日体大)が頂点に立った。グレコローマンの日本勢で34年ぶりに表彰台の中央で君が代を聞き「アジア選手権でも聞いたけど、もっと(心に)響いて気持ち良かった」と感激の面持ちだった。

 文田は初戦で負傷した頭部の止血のために白いテープを巻いて決勝まで闘い、6分間の大接戦で世界一が決まると、セコンドの笹本睦コーチ(39)と抱き合って喜びを分かち合った。2007年大会60キロ級銀メダルの笹本コーチは決勝前に「おまえはここを乗り越えろ」とハッパを掛けたそうで「形を残してくれた健一郎に感謝したい」と話した。

 文田に基本を教えた父の敏郎さん(56)は観客席で見守り「ラスト30秒が長く感じた。(武器の投げに頼らず)よく我慢した」とほっとした表情。日本協会の松本慎吾強化委員長(39)は、日本でフリースタイルに比べて競技人口が少ないグレコでの金メダルに「価値がある」と快挙をたたえた。