59キロ級で初出場の文田健一郎(21=日体大)が初出場優勝を成し遂げた。決勝でミランベク・アイナグロフ(カザフスタン)に2-1で逆転勝ちし、今大会で日本勢初の金メダルを獲得した。日本男子の世界選手権での金メダルは、1983年大会グレコローマン57キロ級の江藤正基以来34年ぶり。日本協会によると、21歳8カ月の文田は五輪、世界選手権を通じ、日本人のグレコ最年少王者となった。新星が20年東京五輪へ向けて弾みをつけた。

 初戦で負傷した文田は止血のテープを頭に巻いて5試合を戦い抜いた。決勝は、低い前傾姿勢で胸を合わせることを嫌うアイナグロフに投げを出せない状況が続いたが、焦りはない。「(得意の)反り投げを警戒してくるのは分かっていた。前に出て重圧をかけてポイントを取っていこうとコーチと相談した」。積極的に前に出てポイントを重ねて逆転。セコンドの笹本コーチと抱き合い、大学の仲間の寄せ書き入り日の丸を掲げ、バック宙で喜びを爆発させた。

 豪快な反り投げなど「投げ」に絶対の自信がある。だが、5月のアジア選手権決勝の再戦となったアイナグロフとの決勝のように警戒された。そんな中でも、活路は見えていた。5試合中テクニカルフォール勝ちは1試合。根気強く前に出る作戦通りの優勝だった。

 昨年のリオデジャネイロ五輪に出られず、今大会に懸けてきた。悔しさもあって、日体大で同学年の樋口黎、先輩の太田忍(ALSOK)がリオ五輪で獲得した銀メダルには1度も触れていない。「五輪のメダルではないので価値は違う。でも、自分で手に入れた金なのでうれしい」。