日本は最終戦の中国戦で1-3で敗れ、今大会を2勝3敗の5位で終えた。

 選手が通り過ぎていく取材ゾーンで、日本代表の中田久美監督(52)がインタビューを受けていた。突然、後ろを向く。カメラに顔が映らないようにした。目元をぬぐい、必死に心を落ち着かせようとしている。目は真っ赤で、涙があふれている。カメラに向き直る。「どういう涙ですか」の問いに「悔しいですね。年取ると涙腺がゆるくなって」と言って、苦笑いを浮かべたが、複雑な思いがまじった涙に映った。

 やや時間をおいて再び涙の理由を聞かれると「どうしたんでしょうね。選手が、頑張ってくれたという気持ちだけです…」と言いながら、必死にこみあげる涙を我慢していた。

 試合は中国相手に善戦するが、肝心なところで競り負けた。試合後、MB荒木が振り返ったように「中盤から終盤にかけて、こちらが疲労してくると、強打されたり、プッシュされて点を奪われた」と、実力差にものを言わされた。スタミナ面でも、精神面でも、そして攻撃のレパートリーでも中国が一枚も二枚も上であることは明らかだった。

 ただ、中国、米国、ブラジル、セルビア、ロシアと戦い続けながら、一方的に点数を重ねられていく惨敗という姿はほとんど消えつつある。中国のスパイクに食らい付き、粘り強く反撃した。攻撃でも、ラリーの中ではレフトからの攻撃に偏っていた場面で、バックアタックやライト攻撃を織り交ぜる視野の広さに兆しを感じさせた。

 中田監督の就任1年目は15勝6敗の成績で終えた。「五輪までを3段階とするなら、今年は40%。土台はできつつある。来年に強化して、70%まで積み上げたい」。1年を締めくくる中国戦を終えて、多少なりとも手応えを感じ、必死に食い下がる選手の姿に成長や進歩を感じ取ったのかもしれない。

 それでも、まだまだ道程は険しい。中田監督は就任最初のミーティングで「これは国家プロジェクト。私たちは結果を出さないといけない。そういう気持ちでこれからの日々を練習してほしい」と、20代~30代の選手に熱く問いかけた。女子バレーボールは日本の五輪種目でも非常に関心が高く、人気のスポーツだ。引き受けた以上は大きな重圧もある。

 この日、目を赤く腫らした中田監督の姿に、いばらの道への大いなる不安と、乗り越えなければならないという決意を感じた。