【モスクワ19日=高場泉穂】五輪連覇に向けた最高難度の「SEIMEI」が、いよいよベールを脱ぐ。今日20日に開幕するフィギュアスケート・グランプリ(GP)シリーズ第1戦ロシア杯の公式練習が、当地の会場で行われ、羽生結弦(22=ANA)は練習で自身4種類目の4回転ジャンプとなる4回転ルッツに成功。フリーで初めて同ジャンプを組み込むことを明言した。ルッツを含む4回転5本の構成で、平昌五輪シーズンの本格開幕を告げるGP初戦に挑む。

 羽生は「五輪に向かい試合を重ねていくが、数は限られている。出来るだけやりたい。守ることも捨てることも、いつでもできるので」と4回転ルッツに挑む理由を語った。ルッツがなくても勝てる自信はある。それでもやるのが羽生だ。

 予定しているのはフリー「SEIMEI」の冒頭。曲に合わせた練習では跳び損じたが、その後、この日8本目の挑戦で見事に成功。会場のファンから歓声が起こった。前日の練習では5本中1本も完璧に決まっていなかっただけに、感覚が「また、一段あがった」と自信を深めた。

 ルッツは6種類の4回転の中で2番目に得点が高く、トップ選手で試合に組み込んでいるのは昨季4大陸選手権王者のネーサン・チェン(米国)、世界選手権銅の金博洋(中国)ら数人のみ。羽生がこの技を入れた場合、フリーでの4回転5本を含む計8つのジャンプ構成の基礎点は95・36点。17年世界選手権でフリー世界最高点223・20点を出した時より約8点高い羽生史上最高の難度となる。

 ただ、リスクはそれだけ高まる。挑むのは精度が上がってきたことに加え、9月の今季初戦オータムクラシックでの悔しさが教訓となったからだ。同大会では右膝痛のため、ジャンプ構成の難度を落としたことで集中を欠き、結果ミスを連発した。右膝に問題はなく「やっと自分が目標としていた構成に、体がついてきた」と喜びを隠さない。「一番自分が本気を出せるプログラムでやりたい」と、気持ちを高ぶらせ、GP初戦を迎える。