女子500メートルは平昌五輪金メダル候補の小平奈緒(31=相沢病院)が自身の国内最高記録を0秒14更新する37秒25で3年連続8度目の優勝を果たした。同種目は昨年大会から国内外で出場レース16連勝。W杯を全勝で総合優勝した昨季からの盤石の強さを見せつけた。4位までの選手が37秒台の好記録を出すなど、日本の複数メダル獲得の期待も高まった。

 小平が“試運転”で異次元の速さを見せつけた。100メートルを全体2位の10秒33で通過すると、最初のコーナーから一気に加速した。伸びのある滑りで同走の辻麻希を突き放し、美しいフォームを保ったままゴール。五輪連覇中の李相花(韓国)が12年に出した37秒60のリンク記録を破る37秒25にも、表情はわずかに緩めただけ。「まだまだ大事に滑っている。エンジンはかかりかけたところ。これから1速、2速、3速とアクセルを踏めればいい」と、さらなる高みを見据えた。

 30歳で迎えた昨季、積み重ねてきた努力が形となって表れた。W杯、世界距離別選手権など出場した国内外のレースで15戦全勝。その勢いのまま迎えた今季も攻め手は緩めず、夏場の陸上練習で右肩が上がる癖の修正に取り組んだ。男子との練習量を増やし、空気抵抗がより小さくなる低いフォームを習得するなど、進化を求め続け、開幕戦のリンクに立った。

 圧勝で終えた初戦にも、結城匡啓コーチは「疲れが残っているし、まだ90~95%」。小平自身も「タイムはもっと伸ばせると思う」と言い切った。3度目の五輪で目指すのは、表彰台の真ん中以外にない。日本人で唯一その景色を知る長野五輪金メダルの清水宏保氏は、会場で見た小平の滑りに「次元が違いすぎる。ただ、エンジンの領域はたくさん残っている」と今季の活躍に太鼓判を押した。次戦は11月10日にオランダで開幕するW杯初戦。日本のエースはまだまだ速くなる。【奥山将志】