「五輪では彼が勝つ」。フィギュアスケート男子で66年ぶりの五輪連覇を狙う羽生結弦(22=ANA)へ、羽生の憧れのスケーターであるエフゲニー・プルシェンコ氏(35)が15日、力強いエールを送った。

 プルシェンコ氏はこの日、都内で行われた羽生が出演するP&GのCM発表会に出席。9日の練習中に転倒し、右足関節外側靱帯(じんたい)損傷となった羽生に対し、「私は、これまで15回手術をうけました。そのうち3回は背骨の手術で、すべてが大きな手術でした。彼に伝えたいのは自分の中にしっかりとした軸があれば必ず回復するということです。そして、ユヅルは軸を持っているので、必ず回復して、みんなに、全世界に滑りをみせてくれると信じています」と、何度もケガを乗り越えた自分の経験を踏まえ、語りかけた。

 プルシェンコ氏は、連覇を狙った10年バンクーバー五輪で4回転を成功させたが、1本も4回転を跳ばなかった米国のライサチェックに破れ、銀メダル。4回転を跳ばない金メダリストに異を唱えた。だからこそ、複数の4回転ジャンプを何本も跳んで競う、現在の男子シングルの流れを歓迎する。「今の現役みなさんがフィギュアスケートという競技を大きく前進してくれたことに感謝したい。羽生結弦は、まったく新しいフィギュアスケートをつくってくれた」。

 その上で、羽生には今回のケガにつながった4回転ルッツを「やる必要はない」とアドバイスした。「彼は4回転を3回やれば十分だと思います。なんと言っても、羽生選手は他の選手と滑りがまったく違う。これは決して、私がいたずらに褒めているわけではなく、事実を述べているだけです。他の選手とは(ジャンプの)回り方が違う、滑りが違う。観客の心をつかむのも、羽生選手にしかできないこと。もし、次の五輪も出場するならそのときは4回転ルッツが必要だと思いますが、今回に関しては必要ないと思います」。ケガを治し、「冷静な頭脳でもって、自分の愛することを五輪の場でやればいい」と最高難度に挑戦せずとも、勝てると太鼓判を押した。