世界選手権女子シングルス金メダルの奥原希望(22=日本ユニシス)が1回戦のワンプレー、1分足らずで棄権した。明地七海(京都府)と対戦。サーブを受けて、ラリーに入り、相手がシャトルをネットにかけて1-0になったとき、奥原はジャッジに棄権を申し入れた。

 9月のジャパン・オープンで痛めた右膝のケガが長引いていた。前夜と朝にチームの首脳陣に相談。棄権の方針を固めたという。「回復しているが、できる状態ではない」と説明。全日本総合は昨年も右肩痛のため2回戦で棄権。9月の右膝負傷後は、10月のスーパーシリーズ、デンマーク、フランス、中国オープンと棄権が続く。

 今回は日本一を争うこととともに、来年度の日本代表を決める重要な大会。選考規定に出場を義務付けられてはいない。世界女王。仮に欠場しても日本協会からの推薦は確実にもらえた。それでも、国内最高峰の大会への敬意と「コートには立ちたい」との意志で、ワンプレーのみでも出場の道を選んだ。

 「目指す東京(五輪)のためには(棄権を)決断するしかない。今はしっかりと体と相談して、日々、治療とトレーニングでベストを尽くすしかない」と、こらえていた涙を流した。来月は、五輪、世界選手権に続く、スーパーシリーズファイナル(ドバイ)が控えるが、現状では万全での出場は厳しそうだ。

 8月の世界選手権(英国)では、スピードと粘り強いプレーで世界の頂点に立った。155センチの小兵で、手術した両膝をかかえる。その後は反動から古傷の右膝のケガに苦しんだ。明と暗が分かれた1年となったが「この1年の経験は東京(五輪)につながる。必ず強くなって戻ってくる」と必死に前を向いた。