アメリカンフットボールで、広告大手の電通が創部41年目にして初の日本社会人1部Xリーグ(日刊スポーツ新聞社ほか主催)昇格を決めた。今季は2部のX2東地区2位で入れ替え戦出場となり、17日に富士通スタジアム川崎でXリーグ16位警視庁と対戦。2度リードされるも追いつき、14-14で延長タイブレークに突入。先攻の電通がFGに成功も、後攻の警視庁はFGを失敗して17-14で勝ち、3度目の挑戦で悲願を達成した。

 勝利の瞬間、広告マンがグラウンドになだれ込んで喜びを爆発させた。LB玉岡主将は今季就任も7月に関西支社へ異動になり、週1回の練習に上京する。「この3週間は濃い練習ができた。信じ合い、一丸になれた」と手応えがあった。77年に経験者が同好会として創部。近年は本気になり出し、協力会社などに声掛けして選手を補強。ライバル博報堂の社員もいる。

 13年に初めて入れ替え戦に出場し、15年は警視庁にタイブレークで負けていた。三度目の正直に、前主将のOL趙は「続けて借りも返せたが、これで辞められなくなった」と真顔になった。昨年も2部で全勝優勝したが過労死問題から入れ替え戦への出場を辞退。DB坂梨は「仕事量が減ったことでトレーニング時間はできた」と話した。

 来季は米国人補強も多いトップリーグで戦う。会社は資金援助を約束しているがベテランも多く、選手補強や運営強化は必須。豊田総監督は「これから真剣に考える」。41歳のDB剣持も「続けたかいはあったが、若いのを集めないと」と苦笑いだった。【河合香】

 ◆電通過労死事件 新入社員の女性(当時24)が15年12月、都内の寮で自殺した。16年9月、労働基準監督署は女性の過労による労災を認定。厚労省は電通本支社に強制捜査に入り、電通と当時の上司らを書類送検した。東京簡裁は今年10月、求刑通り電通に罰金50万円の判決を言い渡した。事件を受け、電通は前社長が辞任。午後10時以降の残業を原則禁止にした。